DESIGN
古今東西 かしゆか商店【和ろうそく】
『カーサ ブルータス』2020年4月号より
April 8, 2020 | Design | KASHIYUKA’s Shop of Japanese Arts and Crafts | photo_Keisuke Fukamizu hair & make-up_Masako Osuga editor_Masae Wako
日常を少し贅沢にするもの。日本の風土が感じられるもの。そんな手仕事を探して全国を巡り続ける、店主・かしゆか。今回訪ねたのは琵琶湖をのぞむ町、滋賀県高島市。櫨の実を搾った蝋で手づくりする、近江の和ろうそくに出会った。
キャンドルが大好きで家でもよく灯すのですが、黒っぽい煤が壁や家具につくのが気になっていたんです。そんな時に教えてもらったのが和ろうそく。植物由来の原料でつくられるため、煤や油煙が少なくて蝋もほとんど垂れない--そう聞いてとっても興味を持ちました。
琵琶湖の穏やかな景色を眺めながら、京都から車で約1時間。今回訪ねたのは滋賀県高島市です。昔から寺院が多く、仏事や茶事に和ろうそくが使われてきたこの土地で、1914年に創業したのが〈大與〉。約100年の間、和ろうそくだけをつくり続けてきた工房です。4代目の大西巧さんいわく「和ろうそくの技法は江戸時代中期からあったようですが、混ぜ物を一切せずにつくれる植物原料はとても少ないんです。ウチでは九州産の希少な櫨の木の実から搾った蝋だけを使い、古くから伝わる“手掛け”という伝統技法で1本1本丁寧につくっています」
手掛けとは、熱して溶かした蝋を素手で(!)すくって芯に塗り重ねる方法。塗って乾かす工程を何度も何度も繰り返すことで、分厚い年輪のような“蝋の層”をつくります。この技ができる職人は世界で10人もいないのだとか。
Loading...