CULTURE
【本と名言365】バンクシー|「心ない破壊には、…」
March 27, 2024 | Culture, Art | casabrrutus.com | photo_Yuki Sonoyama text_Toko Suzuki illustration_Yoshifumi Takeda design_Norihiko Shimada(paper)
これまでになかった手法で新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。世界を震撼させる「破壊」は衝動のみにならず。バンクシーの公式画集に記された自身の言葉とは?
心ない破壊には、一考あってしかるべき。
こつ然と現れ、"描いてはいけない場所"に「不都合な真実」を描くアーティスト、バンクシー。2018年、老舗オークションハウスで落札された『風船と少女』が約1.5億円で落札された後、あらかじめ額に仕込んでおいた仕掛けで作品を自動細断させて世界をあっと言わせた"シュレッダー事件"では、「破壊の衝動は創造の衝動でもある」というピカソの名言を引用した。
センセーショナルな作品が話題を呼び、今では新作が発表されるたびに世界各国で速報ニュースが流れる唯一無二のアーティストになったバンクシー。その原点は80年代ニューヨークを席巻した「グラフィティ(graffiti)」にある。
グラフィティは世界的なアートムーブメントだが、その語源が「落書き」を意味するように、建物や公共交通機関に許可なく作品を描く行為は器物損害にあたり処罰の対象になりうる。そのため、有名になった現在もストリートで作品を発表し続けるバンクシーは「アートテロリスト」や「ヴァンダルズ(破壊者)」とも囁かれてきた。
しかし実際のバンクシーの活動は、作品を通じてマスコミが報じきれない「不都合な事実」を告発したり、戦争や貧困に苦しむ人々の支援や救援活動を続ける社会活動家であり、アートアクティヴィストの側面を併せ持つ。その知名度と人気の高さも相まって、バンクシーに限っては、建物の所有者の許可なく作品を描いたとしてもお咎めなしというのが実情というところ。
そのバンクシーが2010年に刊行した画集『Wall and Piece』では、ステンシルのストリートアートを始める人へのアドバイスが掲載されている。「泥酔してハイな状態のままデカい仕事に臨めば、マジで見応えのある作品と最低ひと晩の留置所が待っていると心得よ」など実践的な助言の中に、ヴァンダルズ(破壊者)としてのバンクシーの矜持が垣間見えるのが「心ない破壊は、一考あってしかるべき」という一文である。
その「破壊」は、誰が、何のために、どんなリスクを負って行うものなのか?その行為によって拓かれる可能性や創造性は何かーー。次世代のアーティストや作品の鑑賞者にのみならず、自分自身にも問いを投げかけている。
おそらくこの問いが、高度情報社会においても、約25年に渡って"正体不明"のままで縦横無尽に活動を続けながら、世界的に有名になったアーティストの支柱に根づいている。
こつ然と現れ、"描いてはいけない場所"に「不都合な真実」を描くアーティスト、バンクシー。2018年、老舗オークションハウスで落札された『風船と少女』が約1.5億円で落札された後、あらかじめ額に仕込んでおいた仕掛けで作品を自動細断させて世界をあっと言わせた"シュレッダー事件"では、「破壊の衝動は創造の衝動でもある」というピカソの名言を引用した。
センセーショナルな作品が話題を呼び、今では新作が発表されるたびに世界各国で速報ニュースが流れる唯一無二のアーティストになったバンクシー。その原点は80年代ニューヨークを席巻した「グラフィティ(graffiti)」にある。
グラフィティは世界的なアートムーブメントだが、その語源が「落書き」を意味するように、建物や公共交通機関に許可なく作品を描く行為は器物損害にあたり処罰の対象になりうる。そのため、有名になった現在もストリートで作品を発表し続けるバンクシーは「アートテロリスト」や「ヴァンダルズ(破壊者)」とも囁かれてきた。
しかし実際のバンクシーの活動は、作品を通じてマスコミが報じきれない「不都合な事実」を告発したり、戦争や貧困に苦しむ人々の支援や救援活動を続ける社会活動家であり、アートアクティヴィストの側面を併せ持つ。その知名度と人気の高さも相まって、バンクシーに限っては、建物の所有者の許可なく作品を描いたとしてもお咎めなしというのが実情というところ。
そのバンクシーが2010年に刊行した画集『Wall and Piece』では、ステンシルのストリートアートを始める人へのアドバイスが掲載されている。「泥酔してハイな状態のままデカい仕事に臨めば、マジで見応えのある作品と最低ひと晩の留置所が待っていると心得よ」など実践的な助言の中に、ヴァンダルズ(破壊者)としてのバンクシーの矜持が垣間見えるのが「心ない破壊は、一考あってしかるべき」という一文である。
その「破壊」は、誰が、何のために、どんなリスクを負って行うものなのか?その行為によって拓かれる可能性や創造性は何かーー。次世代のアーティストや作品の鑑賞者にのみならず、自分自身にも問いを投げかけている。
おそらくこの問いが、高度情報社会においても、約25年に渡って"正体不明"のままで縦横無尽に活動を続けながら、世界的に有名になったアーティストの支柱に根づいている。
Loading...