CULTURE
【本と名言365】トーベ・ヤンソン|「子どもたちにとっては…」
September 10, 2023 | Culture | casabrutus.com | photo_Miyu Yasuda text_Keiko Kamijo illustration_Yoshifumi Takeda design_Norihiko Shimada(paper)
これまでになかった手法で、新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。世界中で大人気のキャラクター「ムーミン」の生みの親、トーベ・ヤンソン。彼女が言葉と絵を尽くして追求した家族や孤独、自然、そして自由について。
子どもたちにとっては、想像の世界も現実の世界もどちらも大事で対等なのです。
ムーミン谷に住む不思議な生き物たちをめぐる、ユーモアとペーソスがないまぜになった物語は世界中で愛されている。その物語の裏側には、戦争という大変な時代にアーティストとして生き、家族や愛、仕事や人間関係で激しく葛藤し、常に自由を求め続けた作家トーベ・ヤンソンの姿があった。
ヤンソンが生まれたのは1914年、第一次大戦中のヘルシンキだ。父は彫刻家、母は画家という芸術一家。14歳頃から雑誌のイラスト連載の仕事を持ち、物語や風刺画を描く。1940年には仲間数人と「五人の若者たち」というグループを結成した。厳格な彫刻家の父や保守的な美術界からは認めてもらえず、イラストレーターの仕事と画家としての自分の間で葛藤する。そして、一人の舞台演出家ヴィヴィカと出会い恋に落ちる。
この言葉は、彼女が『それからどうなるの?』(邦題『ト-ベ=ヤンソンのム-ミン絵本 それから どうなるの?』/講談社)という絵本で児童書の賞を受賞した時のスピーチで語ったもので、その後も同様の意味の発言を度々している。本書の副題ともなっている「仕事・愛・ムーミン」は、ヤンソンが生涯求めて止まなかったテーマだ。「野性的に生きたい、芸術家じゃなくて」や「物心ついた頃から、私はいつだって冒険が大好きだった」という日記の発言からも伺えるが、彼女が生涯にわたり描き続けたムーミンの物語には、自然の驚異と見えないものへの恐怖、夢と冒険、家族という概念の解体と拡大、そして孤独と自由への尽きない欲求──ヤンソンが常に悩み、人生を駆けて求めてきたものがすべて含まれている。
戦争中に家族や友人たちとの離別を経験し、破壊されていく日常の中で絵や物語に向かっていったヤンソン。この言葉は、自分自身に向けたメッセージでもあるのだ。
ムーミン谷に住む不思議な生き物たちをめぐる、ユーモアとペーソスがないまぜになった物語は世界中で愛されている。その物語の裏側には、戦争という大変な時代にアーティストとして生き、家族や愛、仕事や人間関係で激しく葛藤し、常に自由を求め続けた作家トーベ・ヤンソンの姿があった。
ヤンソンが生まれたのは1914年、第一次大戦中のヘルシンキだ。父は彫刻家、母は画家という芸術一家。14歳頃から雑誌のイラスト連載の仕事を持ち、物語や風刺画を描く。1940年には仲間数人と「五人の若者たち」というグループを結成した。厳格な彫刻家の父や保守的な美術界からは認めてもらえず、イラストレーターの仕事と画家としての自分の間で葛藤する。そして、一人の舞台演出家ヴィヴィカと出会い恋に落ちる。
この言葉は、彼女が『それからどうなるの?』(邦題『ト-ベ=ヤンソンのム-ミン絵本 それから どうなるの?』/講談社)という絵本で児童書の賞を受賞した時のスピーチで語ったもので、その後も同様の意味の発言を度々している。本書の副題ともなっている「仕事・愛・ムーミン」は、ヤンソンが生涯求めて止まなかったテーマだ。「野性的に生きたい、芸術家じゃなくて」や「物心ついた頃から、私はいつだって冒険が大好きだった」という日記の発言からも伺えるが、彼女が生涯にわたり描き続けたムーミンの物語には、自然の驚異と見えないものへの恐怖、夢と冒険、家族という概念の解体と拡大、そして孤独と自由への尽きない欲求──ヤンソンが常に悩み、人生を駆けて求めてきたものがすべて含まれている。
戦争中に家族や友人たちとの離別を経験し、破壊されていく日常の中で絵や物語に向かっていったヤンソン。この言葉は、自分自身に向けたメッセージでもあるのだ。
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