CULTURE
【本と名言365】志村ふくみ|「私にとって色は…」
September 29, 2023 | Culture | casabrutus.com | photo_Miyu Yasuda text_Mariko Uramoto illustration_Yoshifumi Takeda design_Norihiko Shimada(paper)
これまでになかった手法で、新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。草木染めの糸を使用した紬織で知られる染織家、志村ふくみ。植物本来の色を最大限に生かし、美しい紬を生み出す表現者が大事にしていること。
私にとって色は形なのです。
柳宗悦の民藝思想に触れ、自身の母と同じ染織の世界に入った志村ふくみ。彼女が手がける織物は紬織と草木染めという大きな二つの特徴がある。それまで普段着の着物とされてきた紬を対象に美を探求し続け、草木染めに無限の可能性を見出してきた。
染織家と言われるが、志村自身は機を織っていたというより、糸を染めいた実感の方が強いという。なぜなら、織ることはむしろ仕上げの段階に近く、まずよい素材を得ることが肝心だからだ。繭から糸を紡ぎ、野山に分け入って草木を摘み、植物から採取した色で糸を染める作業がすべてのベースになる。植物染めは合成染料と違い、染め上げるまでに多くの工程を必要とし、同じ草木から染めても摘出時期や浸出時間によって一つひとつに個性が出る。自然を相手にするうちにやがて、“植物から紡ぎ出される色は単なる色ではなく、植物が持つ生命そのものが色を通して映し出されている”と感じるようになった志村は、過剰に手は加えず、あくまでも植物が蓄えて生きた色を導き出すという姿勢を持つようになる。
色さえ十分に染まっていれば工夫はしなくてよい。だから、色は形。無作為の表現者が到達した言葉には、植物への畏敬の念が感じられる。
柳宗悦の民藝思想に触れ、自身の母と同じ染織の世界に入った志村ふくみ。彼女が手がける織物は紬織と草木染めという大きな二つの特徴がある。それまで普段着の着物とされてきた紬を対象に美を探求し続け、草木染めに無限の可能性を見出してきた。
染織家と言われるが、志村自身は機を織っていたというより、糸を染めいた実感の方が強いという。なぜなら、織ることはむしろ仕上げの段階に近く、まずよい素材を得ることが肝心だからだ。繭から糸を紡ぎ、野山に分け入って草木を摘み、植物から採取した色で糸を染める作業がすべてのベースになる。植物染めは合成染料と違い、染め上げるまでに多くの工程を必要とし、同じ草木から染めても摘出時期や浸出時間によって一つひとつに個性が出る。自然を相手にするうちにやがて、“植物から紡ぎ出される色は単なる色ではなく、植物が持つ生命そのものが色を通して映し出されている”と感じるようになった志村は、過剰に手は加えず、あくまでも植物が蓄えて生きた色を導き出すという姿勢を持つようになる。
色さえ十分に染まっていれば工夫はしなくてよい。だから、色は形。無作為の表現者が到達した言葉には、植物への畏敬の念が感じられる。
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