CULTURE
【本と名言365】土井善晴|「一汁一菜とはただの…」
September 9, 2023 | Culture | casabrutus.com | photo_Miyu Yasuda text_Mariko Uramoto illustration_Yoshifumi Takeda design_Norihiko Shimada(paper)
これまでになかった手法で、新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。和食を基礎とした家庭料理を探求し続ける料理研究家の土井善晴。日々の食事はごはんと具だくさんの味噌汁、漬物などの一菜があれば十分という「一汁一菜」のスタイルを提言。そこに込められた意味とは?
一汁一菜とはただの「和食献立のすすめ」ではありません。「システム」であり、「思想」であり、「美学」であり、日本人としての「生き方」だと思います。
土井善晴は指摘する。今の日本では手を掛けたものこそが料理だと思っている人が多い。つまり、手の掛からない、単純なものを下に見る風潮が料理をする人のハードルを上げ、苦しめることになっているのだ、と。
2016年に発売された著書『一汁一菜でよいという提案』は、日々料理をするのが大変だと感じる忙しい現代人に向けて書かれた本だ。毎食主菜と副菜をきちんと3品揃えたり、脂質とタンパク質と炭水化物のバランスに気を付けたり、といった“理想”にとらわれて、料理を億劫に感じている人は少なくない。また、西洋の食文化が日本の食卓でも一般化し、加えて、メディアやSNSの進化によって日常には目新しいごちそうや映える料理で溢れている。それと同じものを家庭の食卓に求めてしまっていないだろうか。
本来、食事は心身の健康を育むためにある。栄養バランスや品数に気を取られるがあまり、料理が負担になり、放棄してしまうのは本末転倒。だから、「一汁一菜でよいという提案」なのだ。「一汁一菜」はご飯と、おかずを兼ねるような具沢山の味噌汁のみで構成された献立。もっとも簡素な和食の基本だ。これなら老若男女問わず、どんなに忙しい人でも作れる。必要な栄養が十分摂取でき、野菜などの余った具材は味噌汁の具として使えばいいので食材の無駄も少なくできる。また、食材に触れて料理すると、意識せずともその背景にある自然と直接的につながる。伝統的な日本食には日本人の感性、叡智、風土が凝縮されているのだ。
土井善晴は指摘する。今の日本では手を掛けたものこそが料理だと思っている人が多い。つまり、手の掛からない、単純なものを下に見る風潮が料理をする人のハードルを上げ、苦しめることになっているのだ、と。
2016年に発売された著書『一汁一菜でよいという提案』は、日々料理をするのが大変だと感じる忙しい現代人に向けて書かれた本だ。毎食主菜と副菜をきちんと3品揃えたり、脂質とタンパク質と炭水化物のバランスに気を付けたり、といった“理想”にとらわれて、料理を億劫に感じている人は少なくない。また、西洋の食文化が日本の食卓でも一般化し、加えて、メディアやSNSの進化によって日常には目新しいごちそうや映える料理で溢れている。それと同じものを家庭の食卓に求めてしまっていないだろうか。
本来、食事は心身の健康を育むためにある。栄養バランスや品数に気を取られるがあまり、料理が負担になり、放棄してしまうのは本末転倒。だから、「一汁一菜でよいという提案」なのだ。「一汁一菜」はご飯と、おかずを兼ねるような具沢山の味噌汁のみで構成された献立。もっとも簡素な和食の基本だ。これなら老若男女問わず、どんなに忙しい人でも作れる。必要な栄養が十分摂取でき、野菜などの余った具材は味噌汁の具として使えばいいので食材の無駄も少なくできる。また、食材に触れて料理すると、意識せずともその背景にある自然と直接的につながる。伝統的な日本食には日本人の感性、叡智、風土が凝縮されているのだ。
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