ART
新作『ビガイルド』に見る、ソフィア流のフェミニズム。
『カーサ ブルータス』2018年3月号より
| Art | a wall newspaper | text_Nakako Hayashi editor_Yuka Uchida
トーマス・カリナンの同名小説を映画化した新作には、ソフィアらしい方法で女性から見た世界が描かれています。
『ロスト・イン・トランスレーション』から十数年。本作により、カンヌ国際映画祭では監督賞を受賞。ソフィア・コッポラにも貫禄が出てきました。
Q この設定を選んだ理由は?
ドン・シーゲル監督の映画『白い肌の異常な夜』(1971)を観たときに、ストーリーが極端で、面白いと思いました。この物語は男女間の力関係を描いています。ですがどちらが優位に立つかという争いは、いろんな人間関係で起こりうることなんです。またアメリカ南部という場所はエキゾチックで美しい一方で、ダークな面があって、常に私はその二面性に興味がありました。南部の女性を指す英語表現に「サザン・ベル」という言葉があって、エレガントでフェミニンな女性像の極致が、南部女性であるとされています。大きな邸宅に、ロングドレスをまとった女性がエレガントに歩いているといった、今日ではありえない設定に惹かれました。
Q 繊細で美しい映像でした。
このストーリーには表面上の美しさと裏腹に、ダークな側面があります。政治的にも、歴史的にも。登場人物たちが生活している学校は南部を代表するプランテーションハウスで、その場所の優雅な美しさもありますし、登場人物たちはみなエレガントでフェミニンですが、女性たちの地位が北部とは異なっている。さらに戦時中ですから、女性たちは置いてきぼりで、隔離されています。
ドン・シーゲル監督の映画『白い肌の異常な夜』(1971)を観たときに、ストーリーが極端で、面白いと思いました。この物語は男女間の力関係を描いています。ですがどちらが優位に立つかという争いは、いろんな人間関係で起こりうることなんです。またアメリカ南部という場所はエキゾチックで美しい一方で、ダークな面があって、常に私はその二面性に興味がありました。南部の女性を指す英語表現に「サザン・ベル」という言葉があって、エレガントでフェミニンな女性像の極致が、南部女性であるとされています。大きな邸宅に、ロングドレスをまとった女性がエレガントに歩いているといった、今日ではありえない設定に惹かれました。
Q 繊細で美しい映像でした。
このストーリーには表面上の美しさと裏腹に、ダークな側面があります。政治的にも、歴史的にも。登場人物たちが生活している学校は南部を代表するプランテーションハウスで、その場所の優雅な美しさもありますし、登場人物たちはみなエレガントでフェミニンですが、女性たちの地位が北部とは異なっている。さらに戦時中ですから、女性たちは置いてきぼりで、隔離されています。
Q そんな極端な環境で女たちが集団生活をしている学校に、負傷した兵士が現れると、彼女たちの関係性が変貌していく。女の集団に男が加わったときに起こる現象が、見事に描き出されています。
私は女子だけの寄宿学校で育ったわけではないのですが、女性たちがいて、そこに男性が入ることで関係が変わる、ということは自分でも体験しています。私の映画作りは脚本執筆から始まります。そこで心がけていることは登場人物の女性たちが、そのとき置かれた状況に、どう反応するのか? それを自分のこととして想像し、深く理解して共感しながら描くこと。それがなにより重要だと思っています。
Q 怒り狂う兵士を女性たちが恐れる感情もリアルでした。恐怖の根源である彼をどう扱うかという場面で、再び女性たちが団結します。このあたりにも、女性の代弁者としてのあなたの力量が発揮されていました。これからはどんな映画を作っていきたいですか?
女性の視点から世界を描いた映画はまだ少ないので、私はそれを続けたいと思っています。
私は女子だけの寄宿学校で育ったわけではないのですが、女性たちがいて、そこに男性が入ることで関係が変わる、ということは自分でも体験しています。私の映画作りは脚本執筆から始まります。そこで心がけていることは登場人物の女性たちが、そのとき置かれた状況に、どう反応するのか? それを自分のこととして想像し、深く理解して共感しながら描くこと。それがなにより重要だと思っています。
Q 怒り狂う兵士を女性たちが恐れる感情もリアルでした。恐怖の根源である彼をどう扱うかという場面で、再び女性たちが団結します。このあたりにも、女性の代弁者としてのあなたの力量が発揮されていました。これからはどんな映画を作っていきたいですか?
女性の視点から世界を描いた映画はまだ少ないので、私はそれを続けたいと思っています。
Q 「自分らしさ」をどのようにとらえていますか?
衣装や「マカロンが好き」というような細部にこだわるところが私らしいと思います。今回なら、女性たちにどこか亡霊のような雰囲気を与えるために衣装を日にさらして、消え入りそうな雰囲気を演出しました。美しい映像を作るための制作プロセスを毎回とても楽しんでいます。
衣装や「マカロンが好き」というような細部にこだわるところが私らしいと思います。今回なら、女性たちにどこか亡霊のような雰囲気を与えるために衣装を日にさらして、消え入りそうな雰囲気を演出しました。美しい映像を作るための制作プロセスを毎回とても楽しんでいます。
『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』
監督:ソフィア・コッポラ、出演:ニコール・キッドマン、エル・ファニング、キルスティン・ダンスト、コリン・ファレル。2月23日TOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国公開。
