ART

ホンマさん、写真っていったい何なんですか？

『カーサブルータス』2023年11月号より

October 12, 2023 | Art | a wall newspaper | text_Keiko Kamijo

約10年ぶりに美術館での個展が開催されるホンマタカシ。展示のコンセプトやこれからの写真について聞きました。

《New York》2013年（『THE NARCISSISTIC CITY』より）。

本展で初めて発表される《abstract 1》2014年。

── 今回の展示のコンセプトとなるカメラオブスクラという手法に、いつ頃から取り組まれていたのでしょうか？

僕の著作（『ホンマタカシの換骨奪胎―やってみてわかった！最新映像リテラシー入門―』新潮社）に書いてあるんだけど……。

── 失礼しました！　（本を見ながら）2013年でしたね。カメラオブスクラは「暗い部屋」という意味で、紀元前からあった仕組み。真っ暗な部屋に小さな穴を開けると上下反転した外の像が映し出されます。その像を印画紙に定着させたのが写真です。今回展示されるシリーズでは「都市が都市を撮る」と書かれていますが、都市を撮ろうというのは最初から？

うん。東京もずっと撮ってるし、建築も撮ってるから必然的にそうなりましたね。最初の時期に取ったのが《広島平和記念資料館》なんだけど、丹下健三の歴史的建造物を凡庸なビジネスホテルの部屋をカメラにして撮るっていうのがいいなと。そのシリーズは後に写真集（『THE NARCISSISTIC CITY』）になっています。今はスマホで何でも自由に撮れるんだけど、カメラオブスクラの場合は、まずどの建物を撮るか決めたら、それが撮れる部屋を探さなきゃならない。それが簡単にネットで見つかっても、行ってみたら曇っていて撮れない、なんてことがザラにあって。その不確実性に惹かれるんです。

《広島平和記念資料館》2013年（『THE NARCISSISTIC CITY』より）。

《Revolution》2013年（『THE NARCISSISTIC CITY』より）。

── 確かに、今はどんなに暗くてもスマホで撮れちゃいますもんね。

例えばカーサで丹下建築を撮ってくださいって言われたのに、撮れませんでしたってなる。それ、許されないでしょ？

── 普通にダメですよね。

一枚の写真でだいたい30分の露光時間なんだけど、ちょっと曇ったりすると写らない。普通のカメラマンは、失敗しないように頑張るんだけど、僕はもう十分やってきたから、やりたいのはそこじゃないかなと。また、失敗した写真も実はすごく面白い。なかなか発表する機会がなかったんだけど、今回《アブストラクト》のシリーズとして展示しています。