ART

約30年ぶりの日本での個展が開催！ケニー・シャーフのポップな黙示録。

June 22, 2023 | Art | casabrutus.com | photo_Satoshi Nagare text_Hiroshi Egaitsu

1980年代にニューヨークのストリートアートのシーンで、バスキアやキース・ヘリングらとともに注目を集め、以来40年近くにわたり精力的に制作活動を行っているアーティストのケニー・シャーフ。現在、〈草月会館〉と〈NANZUKA UNDERGROUND〉の2箇所で、日本での約30年ぶりとなる個展『I’m Baaack』を開催中の彼に、現地で話を聞いた。

ケニー・シャーフの日本での約30年ぶりの個展が開催中。1985年に制作し、自ら乗車して東京を疾走したキャデラックの作品と38年ぶりにご対面。

ケニー・シャーフはまだ美大生だった1970年代の終わりに、盟友ジャン＝ミッシェル・バスキア、そしてキース・ヘリングとともにアート・シーンに登場。1980年代の初めには当時のありとあらゆるメディアに若くして露出、雑誌の表紙を飾り、テレビにも出演した。1985年には日本での伝説的な展覧会『ART IN ACTION』を含め、世界中を回って展示を行った。

そして2023年、〈草月会館〉と〈NANZUKA UNDERGROUND〉という2つの会場にて見ることができる彼のアートのスタイルとアプローチは、古びるどころかこれまで以上に的確に、私たちの現在の世界のありようをアクチュアルに捉えている。

〈草月会館〉では、1985年に制作して以降、館内の地下倉庫に眠っていたキャデラックを用いた圧巻の作品と、ポップでカラフルな彫刻作品に加え、当時の映像も流される。そして〈NANZUKA UNDERGROUND〉では新作のペインテイングと、大掛かりなインスタレーション作品が展示されている。コンテンポラリーアートには専門的な知識がないと理解しがたいものも多いが、彼の作品はありとあらゆるメディアを横断しながらも難解さから離れ、誰にでもアート作品としての美の価値を感じられる。

〈草月会館〉の空間に、カラフルでポップ、かつ奇怪ともいえる彫刻作品群が登場。

イサム・ノグチの石庭《天国》と絶妙にマッチする彫刻作品。《REDDY GUY》（1986年／2021年）。

元となる作品は、1987年に巨大遊園地《ルナ・ルナ》のために制作されたもの。《BLUMAMA》（1986年／2021年）。

「子供の頃から絵を描くのに夢中でいつも絵を描いていた。NYの美大に入学したが、概念的な講義ばかりで退屈だった。私たちの前の世代のアートの世界ではコンセプチュアル・アートやミニマリズムが主流で、美術教育を受けた人間にはその意味がわかるが、そうでない人は通り過ぎてしまうような作品も多かった」とケニーは話し始める。

「ジャン（＝ミッシェル・バスキア）とは学校に入って1週間も経たないうちに会った。カフェテリアに行ったら彼がいて（彼はその学校の生徒ではなかった）、僕が持っていたポートフォリオを見せたら『君は絶対有名になる』と言われた。そのあと一緒に出かけたら、彼が最初に壁に“SAMO”（筆者注：バスキアのグラフィティ・ネーム）と描いてマーカーを渡してきたので僕は“Jetsons”（筆者注：1960年代のアメリカのSFアニメ『宇宙家族ジェットソン』から）と描いた。それからずっと一緒にいるようになった。

キース（・ヘリング）ともその同じ週に学校で会った。校舎の中でディーヴォ（筆者注：ニューウェイブ・バンド）の曲が聞こえてきて音を辿ったら、彼が小さな作業部屋をペンキだらけにして一心不乱に絵を描いていた。すぐキースとは部屋をシェアするようになった」