ART
中﨑透がみんなの記憶と一緒に作る、ぼやっとした歴史の総体とは?|青野尚子の今週末見るべきアート
December 8, 2022 | Art | casabrutus.com | text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano
みんなのぼんやりとした記憶を集めたり、奇妙な契約のある「看板」を作る中﨑透。茨城県の〈水戸芸術館 現代美術ギャラリー〉で、彼にとって美術館初の個展が開催されています。テーマは彼が育ち、拠点としている「水戸」。“ホーム”といえる場所で彼が見せるものとは?
『越後妻有 大地の芸術祭』など各地の芸術祭でも人気の中﨑透。水戸で産声をあげ、高校卒業までの大半を水戸で過ごした。東京の大学・大学院で美術を学び、2007年からは水戸に戻り、今もそこを拠点にしている。〈水戸芸術館〉には観客としてだけでなく、アーティストとしても関わってきた。水戸市内では他にも〈水戸のキワマリ荘〉でオルタナティブ・スペース〈遊戯室(中﨑透+遠藤水城)〉を設立するなど、キュレーター的な活動もしている。
今回の個展は、一言で言ってしまえば彼の代表作を網羅した回顧展だ。が、ことはそう単純ではない。会場の壁にはあちこちにテキストが掲げられている。これは、水戸をモチーフにした中﨑の新作《フィクション・トラベラー》だ。水戸や〈水戸芸術館〉に関する思い出や、時にはっきりしないこともある個人的な記憶の断片が綴られている。
《フィクション・トラベラー》は5人のさまざまな年代の水戸在住者へのインタビューをもとにしたもの。テキストは中﨑の旧作と語り会うように、展示室中に散りばめられている。これまでも彼はその場所に関係のある人々にインタビューを行い、それを元にしたインスタレーションなどを発表してきた。
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illustration Yoshifumi Takeda
青野尚子
あおのなおこ ライター。アート、建築関係を中心に活動。共著に『新・美術空間散歩』(日東書院新社)、『背徳の西洋美術史』(池上英洋と共著、エムディエヌコーポレーション)、『美術でめぐる西洋史年表』(池上英洋と共著、新星出版社)。
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