ART
もと発電所の美術館で見る、原始と現代の「人」。
September 13, 2016 | Art, Travel | casabrutus.com | text_Naoko Aono editor_Akio Mitomi
独特のプリミティブな造形を作り出す加藤泉と、意味ありげな場景を描く陳飛。日本と中国、2人の作家がもと発電所だった美術館で共演します。大空間で出会う二人の作品に注目です。
加藤泉と陳飛(チェン・フェイ)は二人とも、個性的な「人」の表現で評価されているアーティスト。1969年生まれの加藤が作り出す人間のイメージは一目見たら忘れられない強烈な風貌で人気だ。離れた大きな眼や、黒や白、赤などに塗られた顔面が胎児や民俗彫刻を連想させる。身体はときに植物や大地と一体化したようにも見える。無垢のエネルギーを発散する、生命力の強い存在を思わせる。
陳飛は1983年中国生まれ。一人っ子政策後に生まれ、急速な近代化の中、外国の資本主義と中国の共産主義との間で揺れる、「ポスト1980年代」に属する作家だ。大学で映画を学んだ彼の作品は謎めいたストーリーを感じさせる。一見、さらっとした筆致で描かれるドライな画面に登場する人々には何か複雑な過去や関係があるのではないか、そんなことを深読みさせてしまう。
加藤の絵は原始へ遡るような、生物学的な「原型」を思わせる一方、陳の絵には急速に変化する社会を泳ぎ切ろうとする「現代人」が登場する。それらは正反対のもののように見えて、同じ人間の裏表でもある。友人どうしである彼らは国も世代も異なるけれど、互いに刺激しあう関係だ。前よりももっと近くなった国の間で交わされるアーティストの対話から新しい価値観が生まれている。
加藤の絵は原始へ遡るような、生物学的な「原型」を思わせる一方、陳の絵には急速に変化する社会を泳ぎ切ろうとする「現代人」が登場する。それらは正反対のもののように見えて、同じ人間の裏表でもある。友人どうしである彼らは国も世代も異なるけれど、互いに刺激しあう関係だ。前よりももっと近くなった国の間で交わされるアーティストの対話から新しい価値観が生まれている。
会場となる「入善町 下山芸術の森 発電所美術館」は旧黒部川第二発電所を改修した美術館。巨大な発電機を取り外した広大な空間には、壁に水力発電に使った導水管が口を開け、他の美術館にはないインダストリアルな風情を見せる。出品される3mを超える加藤の大型彫刻や、陳の大作の新作絵画でまた違う表情を見せるはず。北陸新幹線の開通で東京からのアクセスも便利になった美術館に出かけてみよう。
この世界に生きているー加藤泉 × 陳飛
〈入善町下山芸術の森 発電所美術館〉