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【速報】2021年のターナー賞は、北アイルランドの〈アレイ・コレクティブ〉に決定!
| Art | casabrutus.com | text_Megumi Yamashita editor_Keiko Kusano
アート界で毎年注目が集まる、ロンドンの〈テート・ブリテン〉が主宰するターナー賞。今年はノミネートされた5組全てが複数のメンバーからなるコレクティブ(グループ)というなか、最終審査で〈アレイ・コレクティブ〉に受賞が決定した。
●2021年 ターナー賞受賞〈アレイ・コレクティブ〉とは?
〈アレイ・コレクティブ(Array Collective)〉は、北アイルランドの首都、ベルファストをベースにする11人のアーティストが2016年に結成したコレクティブである。アイルランド島の北部に位置する北アイルランドはイギリスの一部だが、その維持を望むプロテスタントの王党派と、南のアイルランド共和国との統一を目指すカトリックの統一派の間では長年、激しい抗争が続いてきた。ベルファストには暴動を防ぐために2つの居住区の間に「平和の壁」と呼ばれる高い壁があり、そこに描かれたプロパガンダ的壁画は、ベルファスト名物とでもいうべきものだ。
そんな宗教や民族主義による「分断」は、政治、経済、社会などあらゆる面にも及ぶ。〈アレイ・コレクティブ〉のメンバーは、LGBTQ、中絶、メンタルヘルス、福祉問題など、人権に関わる問題に対して、展示やパフォーマンス、ラリーなどによって変革を求めてきた。〈テート・ブリテン〉の館長で審査委員長を務めたアレックス・ファーガソンは、分断が続く厳しい状況下、ユーモアあふれる破天荒な表現によって、深刻な問題にポジティブに取り組んできたことが高く評価されたという。
〈アレイ・コレクティブ(Array Collective)〉は、北アイルランドの首都、ベルファストをベースにする11人のアーティストが2016年に結成したコレクティブである。アイルランド島の北部に位置する北アイルランドはイギリスの一部だが、その維持を望むプロテスタントの王党派と、南のアイルランド共和国との統一を目指すカトリックの統一派の間では長年、激しい抗争が続いてきた。ベルファストには暴動を防ぐために2つの居住区の間に「平和の壁」と呼ばれる高い壁があり、そこに描かれたプロパガンダ的壁画は、ベルファスト名物とでもいうべきものだ。
そんな宗教や民族主義による「分断」は、政治、経済、社会などあらゆる面にも及ぶ。〈アレイ・コレクティブ〉のメンバーは、LGBTQ、中絶、メンタルヘルス、福祉問題など、人権に関わる問題に対して、展示やパフォーマンス、ラリーなどによって変革を求めてきた。〈テート・ブリテン〉の館長で審査委員長を務めたアレックス・ファーガソンは、分断が続く厳しい状況下、ユーモアあふれる破天荒な表現によって、深刻な問題にポジティブに取り組んできたことが高く評価されたという。
今回、授賞式が行われたのは、今年の「文化都市」に指定されているコベントリーにある〈コベントリー大聖堂〉だ。第二次世界大戦中にドイツ軍による爆撃で大破し、バジル・スペンスの設計で再建されたイギリスのモダニズム建築を代表する秀作だ。その正面にある〈ハーバート美術博物館〉では、今回のノミネート5作の展示が行われている。ちなみに、この博物館はイギリス留学中の眞子さまがインターンをしていたところでもある。
〈アレイ・コレクティブ〉の展示は、無免許パブ《シビン》を再現したものだ。天井からはデモなどに使われる垂れ幕がいくつも下がり、活動の様子の映像の上映、写真などの展示がある。民話や神話などに基づくものなど、部外者にはわかりにくい面はあるが、コスプレというかカーニバルのようなアクティビズムの様子はシュールで面白い。流血を繰り返し分断されてきた北アイルランドだが、アートに内在する社会を変えていくパワーが感じられ、分断の時代の終焉も予感させるものになっている。
〈アレイ・コレクティブ〉の展示は、無免許パブ《シビン》を再現したものだ。天井からはデモなどに使われる垂れ幕がいくつも下がり、活動の様子の映像の上映、写真などの展示がある。民話や神話などに基づくものなど、部外者にはわかりにくい面はあるが、コスプレというかカーニバルのようなアクティビズムの様子はシュールで面白い。流血を繰り返し分断されてきた北アイルランドだが、アートに内在する社会を変えていくパワーが感じられ、分断の時代の終焉も予感させるものになっている。
●時代を先駆けるターナー賞
19世紀ロマン主義画家J.M.W.ターナーの名を冠したターナー賞は、1984年の創設。イギリス国内で活動する50歳以下のアーティストに与えられる大賞だ。ダミアン・ハースト、アニッシュ・カプーア、ヴォルフガング・ティルマンス、グレイソン・ペリーなど、錚々たる面々が受賞者に名を連ねる。受賞は逃したものの《マイ・ベッド》でノミネートされたトレイシー・エミンが授賞式で泥酔するなど、ゴシップ的話題にも事欠かず、それによって現代アートの認知度が上がってきた面もある。
一方、それがアート作品の市場価値高騰を招くことにもなり、「アートの商業化」との批判も少なくない。そんな傾向に一石が投じられたのが2015年のことだ。この年のターナー賞は建築家、アーティストなど20代の男女16人で構成される〈アセンブル〉が受賞する。いわゆるアート作品とは一線を画すコレクティブによるコミュニティ再生プロジェクトが評価されてのことだ。これを機に「時代を反映する社会性のあるもの」がノミネートされる傾向が強まる。
2019年にはノミネートされた4人が審査員に掛け合い、4人でひとつのコレクティブとして受賞。すなわち賞金を分け合う形を取った。「アートに優越を付けるべきではない」という声明とも言えるが、それを受け入れたターナー賞側もさすがである。2020年はコロナ禍ということで賞のノミネートはなく、代わりに10人のアーティストに助成金が配布されている。
そしてコロナ禍も2年目に入った2021年。選ばれた5つのノミネート作は、時代のムードを反映し、人種、宗教、ジェンダー、障害者、環境問題など、社会が抱える問題に立ち向かうプロジェクトが並んだ。受賞を逃した4つのコレクティブについても紹介したい。
一方、それがアート作品の市場価値高騰を招くことにもなり、「アートの商業化」との批判も少なくない。そんな傾向に一石が投じられたのが2015年のことだ。この年のターナー賞は建築家、アーティストなど20代の男女16人で構成される〈アセンブル〉が受賞する。いわゆるアート作品とは一線を画すコレクティブによるコミュニティ再生プロジェクトが評価されてのことだ。これを機に「時代を反映する社会性のあるもの」がノミネートされる傾向が強まる。
2019年にはノミネートされた4人が審査員に掛け合い、4人でひとつのコレクティブとして受賞。すなわち賞金を分け合う形を取った。「アートに優越を付けるべきではない」という声明とも言えるが、それを受け入れたターナー賞側もさすがである。2020年はコロナ禍ということで賞のノミネートはなく、代わりに10人のアーティストに助成金が配布されている。
そしてコロナ禍も2年目に入った2021年。選ばれた5つのノミネート作は、時代のムードを反映し、人種、宗教、ジェンダー、障害者、環境問題など、社会が抱える問題に立ち向かうプロジェクトが並んだ。受賞を逃した4つのコレクティブについても紹介したい。
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