ART
抽象絵画のパイオニア、リー・クラズナーを知っていますか?
October 7, 2020 | Art | casabrutus.com | text_Tomoko Sakamoto
〈MoMA〉で個展を開いた数少ない女性アーティストのひとりであり、かのジャクソン・ポロックの妻としてその創作人生にも多大な影響を与えたクラズナー。スペインの〈ビルバオ・グッゲンハイム美術館〉にて開催中の個展で、波乱万丈の一生を多彩な作品でたどる。
スペインでは初となるリー・クラズナーの個展、『Living Color(ありのままの色)』展が、〈ビルバオ・グッゲンハイム美術館〉で開催中。アメリカのアブストラクト・アートシーンを牽引し、またポロックの妻としても知られた彼女の作家人生の全てに迫る、充実した内容となっている。
若くしてハンス・ホフマンやピート・モンドリアンらからも一目置かれるほどの才能を開花させたクラズナーは、ニューヨークでのグループ展で知り合ったポロックと結婚。1945年からの共同生活の中で、『Little images(小さなイメージ)』シリーズなど、互いへの大きな影響を感じさせる作品を発表していく。1956年には、血肉を想起させるような『Prophecy(予言)』シリーズを製作中に突然、ポロックが若い愛人とドライブ中に交通事故でこの世を去ってしまうが、そのショックの中でも、彼女は自分のすべてをキャンバスの中に表現し続けた。
若くしてハンス・ホフマンやピート・モンドリアンらからも一目置かれるほどの才能を開花させたクラズナーは、ニューヨークでのグループ展で知り合ったポロックと結婚。1945年からの共同生活の中で、『Little images(小さなイメージ)』シリーズなど、互いへの大きな影響を感じさせる作品を発表していく。1956年には、血肉を想起させるような『Prophecy(予言)』シリーズを製作中に突然、ポロックが若い愛人とドライブ中に交通事故でこの世を去ってしまうが、そのショックの中でも、彼女は自分のすべてをキャンバスの中に表現し続けた。
本展では、ポロックと出会う前の初期の作品から、ポロックとの共同生活の中で描かれた抽象画の数々、そして彼の死後から自身の晩年までに描かれた作品と、時代ごとに彼女が制作した作品の数々を展示する。『Little images(小さなイメージ)』シリーズや『Prophecy(予言)』シリーズなどの作品はもちろん、20歳の頃に描いた自画像など、多彩な作品が揃う。
彼女の作品の力強さは、抽象画という表現の中に彼女が残した、色や形、筆跡の生々しさ、そして題材(テーマ)のリアルさにある。白、黒、アンバー(琥珀色)という限定されたパレットで描かれた大きなモノクロームの作品群や、1960年代に入って制作された緑やピンクを用いた色鮮やかな絵画には、その理解を助けるように、またはその印象を裏切るように、「Night Journey(夜の旅)」「Primary Series(根源的なシリーズ)」といった意味深なタイトルがつけられている。感情や希求のような、目に見えないけれど確かにそこにあると感じられている何かが、彼女の手によって視覚化、具現化され、絵画のかたちをとって私たちの前に差し出される。彼女が描き出す、その「ありのままの色(Living Color)」に、抽象画というものの印象をきっと鮮やかに覆されるだろう。
『Living Color』
〈ビルバオ・グッゲンハイム美術館〉
Abandoibarra Etorbidea, 2. 48009 Bilbao TEL34 944 359 080。〜2021年1月10日。11時〜19時。月曜休(10月12日、12月7日・28日は開館)。15€。