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瀬戸内国際芸術祭 2019〈本島・高見島〉新作レポート
| Art, Travel | casabrutus.com | photo_Takuya Neda text_Mariko Uramoto
『瀬戸内国際芸術祭 2019』の秋会期が開催中。香川県の直島や豊島、岡山県の犬島や宇野港に加えて、香川県中西部の4つの島が加わり、11の島と2つの港で作品が展示されている。今回は秋会期で初披露されている本島と高見島、それぞれの注目作を紹介していきたい。
●本島
本島は戦国時代から江戸時代にかけて、塩飽(しわく)水軍と呼ばれる海軍の本拠地として栄えていた島だ。島の中には造船技術を持つ塩飽大工たちが建てた家屋が多く残っている。中でも本島の北側、笠島地区は塩飽大工たちが手がけた貴重な町家建築が密集し、まるで江戸時代から時が止まったような景観を形成している。『瀬戸内国際芸術祭2019』秋会期で発表された新作にはこれらの建物を生かした作品も多い。
アリシア・クヴァーデは塩飽大工が建てた日本家屋の中に、《レボリューション/ワールドラインズ》を発表した。そのうち惑星の軌道を思わせる彫刻作品《レボリューション》は、本島の浜から採取した石をリングに通したもので、古民家の中に宇宙空間を感じられるダイナミックな作品だ。
塩飽大工の作業場だったという建物で作品《笠島ー黒と赤の家》を発表したのはタイ人のアーティスト、ピナリー・サンピタック。玄関にはマーライと呼ばれるタイの伝統の花飾りがいくつもたなびいて、鑑賞者を出迎える。庭にはサンピタック作品のトレードマークである、女性の乳房やタイのストゥーパ(仏塔)をイメージした彫刻を展示。屋久杉を炭で燻して黒く仕上げているという。屋内はタイ北東部で作られている赤い枕を並べたカフェスペースに。作品名の「黒」と「赤」は日本の伝統色からチョイスしたとサンピタック。ここではタイ料理を提供しており、舌の上でタイの文化を味わうこともできる。
来年行われる『横浜トリエンナーレ2020』でアーティスティックディレクターを務めるラックス・メディア・コレクティヴ。彼らは平安時代の歌人、曽禰好忠がの恋に関する句から着想を得て作品を制作。櫂をなくした船が行く先も決まらぬまま波間に漂うように、自分たちの恋の行方もどこへ漂うのかと思い迷う心を表現した句を、折り紙の船を模した彫刻作品で表した。見える角度によって色が変化する素材、レンチキュラーで作った船は、愛情を示すような赤のグラデーションで、潮の満ち引きに合わせて揺れる様子が二人の行く末を案じる心を投影している。
2013年から沙弥島、本島の各集落でカラフルな漁網を編むワークショップを行ってきた五十嵐靖晃。本作《そらあみ<島巡り>》は本島に加えて高見島など塩飽諸島の各集落で制作した60mの漁網に、春会期に沙弥島で発表した60mの「そらあみ」とつなげて、全長120mにスケールアップしたもの。泊海岸の波打ち際に垂直に立てられた漁網は見る角度や潮の満ち引き、気候、時刻によって表情を変える。揺れるたびに風の存在を教えてくれる漁網は、島と島のつながりを象徴する旗のようだ。
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