ARCHITECTURE
コルビュジエらしさを凝縮、ベルリンの〈ユニテ〉を拝見!
『カーサ ブルータス』2018年10月号より
September 12, 2018 | Architecture | a wall newspaper | photo_Didier Gaillard-Hohlweg text_Naoko Aono
予算不足から真っ白になっていたアパートの一部屋をル・コルビュジエのエッセンス満載に。仕掛け人を直撃!
ル・コルビュジエの集合住宅といえばマルセイユの〈ユニテ・ダビタシオン〉が有名だが、ベルリンにも1958年に彼が手がけたアパートがある。しかし当時、建設を進めた自治体には予算がなく、ル・コルビュジエは基本的な構造だけを担当。住戸内は他の建築家による、白くてそっけないインテリアのままだった。ル・コルビュジエは抗議したが、どうにもならなかったらしい。
それを残念に思ったアーティスト、フィリップ・モーアがもっとル・コルビュジエらしい空間にしたいと一念発起、住戸の一つを買い取ってリノベーションした。モーアは1980年代、10代のころにル・コルビュジエの回顧展を見て以来、彼のファンだったのだ。が、ベルリンの〈ユニテ〉に関してはル・コルビュジエによる完全なスケッチが残っているわけではない。そこでモーアは他のル・コルビュジエのデザインをマッシュアップすることにした。〈ユニテ・ダビタシオン〉はマルセイユ、ベルリンのほかにフランスのルゼ、ブリエ=アン=フォレ、フィルミニに建てられており、その他に計画案のみで建設されなかったものもいくつかある。
「パリに残っている資料や、フランスでル・コルビュジエが同時期に建てた建物を僕が撮影、実測したものを参考にしました。壁画は他の建物の壁画をコピーしています。シャワーブースは〈サヴォア邸〉のものと同じデザインにしました。キッチンはミュンヘンで僕が入手したオリジナルのものを設置しています。色は今残っているル・コルビュジエ建築の色やポリクロミーと呼ばれる彼の色彩理論に基づいて選びました」
こうして出来上がったアパートメントにはル・コルビュジエらしいタイムレスな色が随所にあしらわれた。居心地のいい色合いが木の床や壁と調和する。椅子などの家具や照明器具もル・コルビュジエのほか、シャルロット・ペリアンやジャン・プルーヴェら同時代のもので揃えた。
世界中にル・コルビュジエのファンはたくさんいるけれど、ここまで完成度の高いものを作ってしまう人はそういない。モダニズムの巨匠への愛とリスペクトが生んだ、スペシャルな空間だ。
世界中にル・コルビュジエのファンはたくさんいるけれど、ここまで完成度の高いものを作ってしまう人はそういない。モダニズムの巨匠への愛とリスペクトが生んだ、スペシャルな空間だ。
ベルリンのユニテ・ダビタシオン Le Corbusier-building, Flatowallee 16, 14055 Berlin。現在、個人が住宅として使用しており、見学はメール予約制(英語)。Corbu.258@gmail.com。1人5ユーロ。
Philipp Mohr
フィリップ・モーア アーティスト。アート、デザイン、建築、土木を学んだ。彼のスタジオではデザイナーや建築家たちと協働、ブランディングやショップのインテリアを手がけている。