ARCHITECTURE
坂茂建築設計が手がけた、世界遺産・富士山を守り継ぐための施設。
February 15, 2018 | Architecture, Travel | casabrutus.com | photo_Hiroyuki Hirai text_Housekeeper
2013年6月、富士山が世界文化遺産に登録された。この富士山を「守る」「伝える」「交わる」「究める」ための施設として昨年末に誕生したのが、〈静岡県富士山世界遺産センター〉だ。
場所は富士山のお膝元、静岡県富士宮市。駿河国の一宮である〈富士山本宮浅間大社〉の鳥居に接して建てられた。設計は2014年にプリツカー賞を受賞し、紙管を使った災害時の復興住宅や、フランスの〈ポンピドゥー・センター ・メス〉で名高い坂 茂。建物の中心になる展示棟を、木格子を組み上げた逆円錐状の「逆さ富士」の形にデザインし、訪問者に鮮烈な印象を与えることに成功した。
展示棟は、この逆さ富士の中をらせん状に歩きながら6つの展示ゾーンを巡る造り。壁面に投影された富士山にまつわる映像を見ながら全長193mのスロープを登ることで、空中を浮遊するような感覚で富士登山を疑似体験することができる。
また、富士山を中心とした高山帯から駿河湾までの生態系を紹介するゾーンや、古来よりその優美な姿が詩や絵画で表現されてきた富士山を美術や文学で紐解くゾーンなども。歴史、文化、自然など様々な角度から富士山を学べるようになっている。
その雄大な美しさはもちろん、ときに噴火を繰り返す激しさから、畏れられ、崇拝の対象となってきた富士山。古来より日本人にインスピレーションを与え続けてきた文化的価値を、この施設で改めて感じられるに違いない。