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ARCHITECTURE

里山に出現した藤森建築。その日々の営みの記録が写真集に。

| Architecture, Culture | casabrutus.com | text_Ai Sakamoto

建築と自然との共生を目指す建築家・藤森照信と、菓子メーカー〈たねやグループ〉が作り上げた複合施設〈ラ コリーナ近江八幡〉。その1年に渡る記録を収めた写真作品集『La Collina 2017』が発売された。

藤森照信作品集『La Collina 2017』。発行:たねやグループ、発売:トランスビュー。
藤森照信作品集『La Collina 2017』。発行:たねやグループ、発売:トランスビュー。
屋根にニラやタンポポが生えた住宅に、小高い丘が隆起してできたような博物館、最近では竪穴式の茶室など、オリジナリティあふれる建築で知られる建築家であり、建築史家でもある藤森照信。独自の解釈で、建築と自然を一体化させる彼の作品は、建築家・隈研吾をして「見たこともないのに懐かしい」と言わしめる温もりと愛らしさがある。

そんな藤森が、2012年以降、継続的にかかわってきたのが、滋賀県近江八幡市にある〈ラ コリーナ近江八幡〉だ。和菓子の〈たねや〉と洋菓子の〈CLUB HARIE(クラブハリエ)〉を展開する菓子メーカー〈たねやグループ〉の拠点で、水田や棚田、畑などが広がる約35,000坪の敷地に、本社〈銅屋根〉やメインショップ〈草屋根〉、カステラショップ〈栗百本〉、そして〈草回廊〉が建つ。これらの建築だけでなく、水田や棚田も藤森によりデザインされたものというから驚くばかりである。
メインショップ〈草屋根〉の北側に広がる田んぼと、てっぺんにマツを頂いた大小7つの石〈七つ石〉。プリミティブな光景だ。
メインショップ〈草屋根〉の北側に広がる田んぼと、てっぺんにマツを頂いた大小7つの石〈七つ石〉。プリミティブな光景だ。
写真撮影のためのモニュメント〈土塔〉。モルタル仕上げで、輪郭に沿って五葉松が植えられている。小さなドアが、子供たちの格好の遊び場に。
写真撮影のためのモニュメント〈土塔〉。モルタル仕上げで、輪郭に沿って五葉松が植えられている。小さなドアが、子供たちの格好の遊び場に。
稲刈りワークショップ時、〈銅屋根〉を西面から眺める。左手に見えるのが展望塔、右手の屋根を突き抜けているのがシンボルツリーのクスノキ。
稲刈りワークショップ時、〈銅屋根〉を西面から眺める。左手に見えるのが展望塔、右手の屋根を突き抜けているのがシンボルツリーのクスノキ。
メインショップ〈草屋根〉の北側に広がる田んぼと、てっぺんにマツを頂いた大小7つの石〈七つ石〉。プリミティブな光景だ。
写真撮影のためのモニュメント〈土塔〉。モルタル仕上げで、輪郭に沿って五葉松が植えられている。小さなドアが、子供たちの格好の遊び場に。
稲刈りワークショップ時、〈銅屋根〉を西面から眺める。左手に見えるのが展望塔、右手の屋根を突き抜けているのがシンボルツリーのクスノキ。
その1年に渡る記録を収めた写真作品集『La Collina 2017』が発行されたのは、10月上旬のこと。写真家・北田英治が撮影したのは、いわゆる建築写真ではない。そこに写し出されているのは、稲刈り前の田んぼの上空を飛ぶトンボの群れや、楽しげに水田の畦道を走り回る子どもたち、冬支度のために〈草屋根〉の芝を刈る植木職人らの姿。藤森建築を舞台に繰り広げられる、生き生きとした営みの瞬間が切り取られている。

「店の設計をしてほしい。〆切はひと月後。イメージは〈丘〉」という施主の依頼に対し、通常は3〜4か月かかる基本設計を、約束通り1か月後に提出したという藤森。かねてより「丘とは、森でも町でもなく、神様の造り給うた自然と人間の作った都市(町)の中間にあって両者をつなぐもの」と認識していた彼は、「この地の、緑でカバーされた小高い地形をそのまま建物の屋根にすればいい」と考えたという。
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