ARCHITECTURE
【独占】伊東豊雄自身が語る最新建築〈水戸市民会館〉。新たなマスターピースを共に巡る。
August 7, 2023 | Architecture | casabrutus.com | photo_Keisuke Fukamizu text_Sawako Akune
茨城・水戸に誕生した〈水戸市民会館〉は、建築家・伊東豊雄の最新作。訪れる人々を圧倒する木造大架構の吹き抜け空間や、豊かな“余白”のあるホワイエやラウンジなど、伊東の理想とする公共建築が体現された場所だ。このたび、オープン直前に現地を訪れた伊東に独占取材を敢行。この建築のことを中心に、隣り合う名建築〈水戸芸術館〉や水戸の街について、さらに現在進行中のプロジェクトについても話を聞いた。
7月2日にオープンし、伊東豊雄による最新作としても注目の集まる〈水戸市民会館〉。木造大架構の圧倒的なスケール感、最大収容人数2,000人の大ホール、館内のあちこちに用意された市民の居場所……と、訪れる度に魅力を新たに発見できる場所だ。さらにこちらの〈水戸市民会館〉、磯崎新による不朽の名作〈水戸芸術館〉(1990年)とは道路を挟んで隣り合う。新たな建築の名所の誕生であり、市街地に名建築家による力作が居並ぶ水戸市が羨ましい!館のグランドオープンを前に現地を訪れた伊東豊雄その人に、話を伺った。
──〈水戸市民会館〉のオープン、おめでとうございます。こちらの設計は2016年に開催された公募型のコンペティションで勝ち取ったそうですが、当初の構想を教えてください。
伊東 何しろ僕らはその頃、〈新国立競技場〉のコンペティションで負けた直後で……。悔しかった! 〈新国立競技場〉での僕らの案は、外周部を木の大柱でつくる案でしたから、木の大断面による木造建築をどうしてもどこかでつくりたかったんですよね。この水戸市は、とても歴史豊かな街。徳川斉昭公が創設した藩校〈弘道館〉の木造建築が大切に残されているなど、歴史的建造物も多いんですよ。そういう町にふさわしい建築にしたいと考えました。
プロポーザルを経て設計を獲得してできあがった建物は、地上4階地下2階建て。3つのホールや大小の会議室、展示スペース、和室などが備わっています。特に「やぐら広場」と名づけた大きな吹き抜け空間は、柱梁を含めて純木造。2,000席の「グロービスホール(大ホール)」と482席の「ユードムホール(中ホール)」が鉄筋コンクリート造で、それを取り囲むように、長野県産のカラマツの耐火集成材をやぐら状に木組みしています。
──〈水戸市民会館〉のオープン、おめでとうございます。こちらの設計は2016年に開催された公募型のコンペティションで勝ち取ったそうですが、当初の構想を教えてください。
伊東 何しろ僕らはその頃、〈新国立競技場〉のコンペティションで負けた直後で……。悔しかった! 〈新国立競技場〉での僕らの案は、外周部を木の大柱でつくる案でしたから、木の大断面による木造建築をどうしてもどこかでつくりたかったんですよね。この水戸市は、とても歴史豊かな街。徳川斉昭公が創設した藩校〈弘道館〉の木造建築が大切に残されているなど、歴史的建造物も多いんですよ。そういう町にふさわしい建築にしたいと考えました。
プロポーザルを経て設計を獲得してできあがった建物は、地上4階地下2階建て。3つのホールや大小の会議室、展示スペース、和室などが備わっています。特に「やぐら広場」と名づけた大きな吹き抜け空間は、柱梁を含めて純木造。2,000席の「グロービスホール(大ホール)」と482席の「ユードムホール(中ホール)」が鉄筋コンクリート造で、それを取り囲むように、長野県産のカラマツの耐火集成材をやぐら状に木組みしています。
──「やぐら広場」は壮観です! どっしりと太い木の柱が約20mの天井高くまで延びていて、梁と複雑に組み合わさって美しい架構を作りあげている。木造でこんな大空間を実現できるのですね。
伊東 木造の課題は耐火性能でした。特にこういった公共建築では高い耐火性能が必須です。今回使った材は〈竹中工務店〉が開発したものなんですよ。柱は650mm角。その周囲から6cmの部分が“燃え代層”になっていて、その内側にモルタルでできた薄い“燃え止まり層”がある。荷重を受ける構造体はさらにその内側にある集成材なので、荷重支持部分が火災の際にも熱から守られるというわけです。
設計のはじめの段階では、縄文時代の櫓(やぐら)のつくりなどを勉強した記憶があります。プリミティブな構造体を目指していました。果たして実現してみるとなかなかに気持ちいい空間ですね(笑)。僕も家具が入ってからは今日初めて現場に来ましたから、よくなったなあと思っているところです。
伊東 木造の課題は耐火性能でした。特にこういった公共建築では高い耐火性能が必須です。今回使った材は〈竹中工務店〉が開発したものなんですよ。柱は650mm角。その周囲から6cmの部分が“燃え代層”になっていて、その内側にモルタルでできた薄い“燃え止まり層”がある。荷重を受ける構造体はさらにその内側にある集成材なので、荷重支持部分が火災の際にも熱から守られるというわけです。
設計のはじめの段階では、縄文時代の櫓(やぐら)のつくりなどを勉強した記憶があります。プリミティブな構造体を目指していました。果たして実現してみるとなかなかに気持ちいい空間ですね(笑)。僕も家具が入ってからは今日初めて現場に来ましたから、よくなったなあと思っているところです。
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