【東京・日暮里】猫を愛した彫刻家が設計・監督した谷中の住居兼アトリエへ。|甲斐みのりの建築半日散歩
| Architecture, Culture, Food, Travel | casabrutus.com | photo_Ryumon Kagioka text_Minori Kai
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2022年9月7日(水)まで、朝倉の猫の作品に影響を受けたという彫刻家・三宅一樹木の猫をテーマにした作品を常設展示内で紹介する「朝倉文夫と現代彫刻家の猫」を開催。

玄関前の塀には六方石と大谷石を使用。館名にある彫塑とは、彫り刻む技法の彫刻と、粘土などの素材でかたちづくる技法の塑造を合わせた言葉で、朝倉文夫がこだわって使用したという。

玄関前に立って屋上を見上げると、砲丸を手にした青年の彫刻作品「砲丸」が設置されている。

8.5メートルもの天井高を誇るアトリエ床は寄木張り。「墓守」「大隈重信像」など代表作がずらり。地下には電動昇降台の機構がある。コンクリートの壁に淡く茶色に染めた真綿を塗ることで温かい印象にしているという。朝倉の生前は彫刻の専門学校としても機能していた。

数寄屋造で藁壁を採用した1階の居住部分。炉が切ってあるため茶室とも呼ばれる朝倉の自室や、寝室が並んでいる。

居住棟から眺める中庭の五典の池。「仁・義・礼・智・信」の五常を造形化した巨石を配し、朝倉は自身の自己反省の場として設計した。

「素心の間」から中庭を見下ろすと、コンクリート造のアトリエ棟と、木造の居住棟の接合部分がよく分かる。アトリエ棟のコンクリートの壁の上部は黒く塗られ、白と黒を対比させているのも朝倉流の美意識。

居住棟2階にある黒土壁の「素心の間」。趣味を楽しむ部屋として使用されていた。

建物の3階に位置し、客人をもてなすために使用されていた「朝陽の間」。東に大きく窓をとり、赤い瑪瑙(めのう)壁や白い貝壁が光が反射してキラキラ輝く。欅の円卓は朝倉の設計。

書斎。関東大震災を経験した朝倉は、地震で棚が倒れ本が痛む様を目の当たりにしたことで、壁と一体化した作り付けの書棚にこだわった。洋書のほとんどは東京美術学校時代の恩師で西洋美術史家・岩村透が集めたもの。

2階南のテラスには、壁面に設置された豚の口から放水する仕掛けがなされた水場が。カラフルなタイルやスクラッチタイルも見られる。

オリーブの大木が茂る屋上庭園は、コンクリート建築の屋上緑化の貴重な事例として評価されている。朝倉が主宰した朝倉彫塑塾では園芸が必須科目で、塾生の園芸実習の場として活用されていた。
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