ARCHITECTURE
あの井上雄彦のガウディに、もう一度会いに行く。
December 20, 2020 | Architecture, Art | casabrutus.com | photo_Takuya Neda text_Tomoko Sakamoto editor_Keiko Kusano ©️I.T.Planning, Inc.
2014年に東京を皮切りに全国を巡回して話題になった『ガウディ×井上雄彦-シンクロする創造の源泉-』展から早6年。井上雄彦の描いたガウディが、六本木の〈スペイン大使館〉にて部分的に再展示されています。
『ガウディ×井上雄彦-シンクロする創造の源泉-』展は、おそらく世界で最もその名を知られる建築家であるアントニ・ガウディを、井上雄彦が想像するひとりの孤独な男として一人称で描いたものである。
ガウディは、どこにでもある自然の中にモチーフを求め、それを独自のやり方で空間化しながら、多くの名作を遺した。ガウディが他界してすでに100年近く経っているが、井上雄彦は、その男の人生の軌跡を、実際にスペインへ赴き可能な限り自分で徹底的に追跡して、その人となりを等身大で想像し、これらの絵を描いた。
ガウディは、どこにでもある自然の中にモチーフを求め、それを独自のやり方で空間化しながら、多くの名作を遺した。ガウディが他界してすでに100年近く経っているが、井上雄彦は、その男の人生の軌跡を、実際にスペインへ赴き可能な限り自分で徹底的に追跡して、その人となりを等身大で想像し、これらの絵を描いた。
幼少期リウマチを患って思うように身体を動かせなかった幼いガウディは、一人きりで野原に座りこんで何を見ていたのだろうか。井上の中のガウディは、長く想い続けた女性との結婚が叶わず、ひとりまたひとりと家族や兄弟、弟子など大切な人々にも先立たれ、年老いてますます孤独に苛まれた苦悩をその表情に刻む。その姿は、我々が知る「天才建築家ガウディ」の像とは大きくかけ離れているかもしれない。
ただ、その中に今ひとつの救いを求めるならば、ガウディが、自分の手を離れて何か別のものへと変貌していく現代のサグラダ・ファミリアと対峙する絵に改めて注目してほしい。
2020年、この贖罪教会はコロナ渦の影響で閉館し、ガウディの死から100年後にあたる2026年完成の予定で進められていた工事も中断し、まずは医療従事者に、そしてバルセロナの市民に無料で開かれた。車通りの少なくなった街に鐘の音を響かせ、教会としての本来の姿を取り戻している。今のような時にこそ、井上雄彦の描くガウディの、孤独や葛藤の切実さや祈りの真摯な気持ちが、より圧倒的なリアルさを持って迫ってくるように思われるのである。
2020年、この贖罪教会はコロナ渦の影響で閉館し、ガウディの死から100年後にあたる2026年完成の予定で進められていた工事も中断し、まずは医療従事者に、そしてバルセロナの市民に無料で開かれた。車通りの少なくなった街に鐘の音を響かせ、教会としての本来の姿を取り戻している。今のような時にこそ、井上雄彦の描くガウディの、孤独や葛藤の切実さや祈りの真摯な気持ちが、より圧倒的なリアルさを持って迫ってくるように思われるのである。
<strong>Casa BRUTUS特別編集 『ガウディと井上雄彦』</strong> 誰もが一度は見たいと憧れる〈サグラダ・ファミリア〉を遺したガウディ、『スラムダンク』『バガボンド』など国民的名作で知られる井上雄彦。異なる時代の創造がシンクロする『ガウディ×井上雄彦-シンクロする創造の源泉-』(2014年)と合わせてつくられたムック。ガウディ巡礼の地バルセロナから日本各地のミュージアムまで、2人の偉大な建築家と漫画家の創造の軌跡を追いかけている。
『異国の恋人 井上雄彦とガウディのバルセロナ&ハビエル・マリスカルとハバナの歴史』
〈スペイン大使館〉東京都港区六本木1丁目3-29。〜2021年1月22日。10時〜17時(金曜〜16時)。土日、12月24、25、31、1月1日休。入場無料。本展覧会は『第17回 ラテンビート映画祭』の一環で、同映画祭プロデューサーのアルベルト・カレロ・ルゴによって企画された。会場では、かつてスペインが統治したハバナの今昔を描いたハビエル・マリスカルの絵も展示されている。
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