名建築に香る舘鼻則孝のアート。|青野尚子の今週末見るべきアート | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

名建築に香る舘鼻則孝のアート。|青野尚子の今週末見るべきアート

木子七郎・内藤多仲・今井兼次。3人の名建築家が関わった知る人ぞ知る築91年の洋館で舘鼻則孝の展覧会が開かれています。香りをテーマに建築と舘鼻作品がコラボレーションする、週末3日間だけの展示です。

「源氏香の図 蒔絵香炉」。石川県輪島市の伝統工芸士の手によって仕上げられた。2階に展示されている。
〈Kudan House〉は新潟県長岡市出身の豪農であり、実業家の山口家5代目の山口萬吉の邸宅だった洋館。最近まで居住していたこともあり、長年非公開だったが、この9月から会員制シェアオフィスとして活用されることになった。その本格的な運用に先立って9月14〜16日の3日間、舘鼻則孝の個展『NORITAKA TATEHANA RETHINKー舘鼻則孝と香りの日本文化ー』で一般公開される。
源氏香をモチーフにした作品。ドナルド・ジャッドなどミニマリズムのアートを思わせる。
この個展は2017年夏に表参道ヒルズで開かれた『舘鼻則孝 リ・シンク展』に続くもの。芸大で花魁の研究に携わり、友禅染めを学んだ舘鼻は「ヒールレスシューズ」など、花魁のファッションを現代に置き換えた作品を制作している。今回は1705年創業の香の老舗「松永堂」とのコラボレーションで、「香り」にまつわる彼の作品と「松永堂」が所蔵する資料が並ぶ。
2階和室の床の間に展示されたヒールレスシューズの新作《Lady Pointe》。バレエシューズがインスピレーション源になっている。
たとえば地下1階にインスタレーションされたミニマル・アートのような幾何学的オブジェは「源氏香」という紋様に基づくものだ。「源氏香」とは5本の線を引いておき、5種類の香りを聞いて(嗅いで)、5本の線のうち同じ香りだと思ったものの頭を横線でつないでできるパターン。全部で52種類あり、源氏物語の全54帖のうち2巻から53巻までの巻名がつけられている。2階に置かれた《源氏香の図 蒔絵香炉》はその源氏香の紋様をあしらった香炉。背後に煙や香りをイメージしたオブジェが置かれている。
東京藝術大学の卒業制作で誕生したヒールレスシューズ。壁の装飾も舘鼻によるもの。革で雲のイメージを表現している。舘鼻にとって雲は天と地、神と民などの境界を表すものなのだそう。
この個展では舘鼻のアイコンとも言える、さまざまなヒールレスシューズが並ぶ。2階の和室の床の間にあるのは最新作のバレエシューズだ。1階ベランダのアーチや室内にしつらえられた噴水の背景には舘鼻が革でグラフィックワークを施した。91年前に建てられた洋館と舘鼻のアートが密接に絡み合う。
地下1階に展示されたヒールレスシューズ。
深い青にきらめくヒールレスシューズ。
地下1階に展示されたヒールレスシューズ。
深い青にきらめくヒールレスシューズ。
建物の中では3ヶ所で松栄堂が調香した香りが漂う。この空間にあわせて舘鼻と松栄堂とで選んだものだ。2階の和室では聞香(もんこう)体験もできる。聞香とは、香木を熱してその香りを楽しむ優雅な遊びだ。香木は同じ種類の木でも1本ずつ香りは異なるのだそう。また同じ香木でも湿度や、その香りを聞く人の体調によって香りが変わる。その他にも香木や調香のための道具、ガレが日本の香炉にヒントを得て作ったガラス器など、松栄堂の貴重なコレクションが展示されている。
エミール・ガレが日本の香炉からインスピレーションを得てデザインしたガラス器。

地下1階の金庫室に展示された《カメリア・フィールズ》。椿は花びらが散らずに首から落ちるため、侍の死に際にふさわしいとされた花。
岡本太郎へのオマージュとして制作した作品。《座ることを拒否する椅子》や太郎作品によく登場するトゲのような造形物を引用している。
地下1階の金庫室に展示された《カメリア・フィールズ》。椿は花びらが散らずに首から落ちるため、侍の死に際にふさわしいとされた花。
岡本太郎へのオマージュとして制作した作品。《座ることを拒否する椅子》や太郎作品によく登場するトゲのような造形物を引用している。