謎めいた神秘の輝き《曜変天目》|ニッポンのお宝、お蔵出し | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

謎めいた神秘の輝き《曜変天目》|ニッポンのお宝、お蔵出し

季節に応じて床の間の軸を替えるように絵や彫刻を愛でる。今回は世界に3つしかないという《曜変天目》と、同時期に公開されている《油滴天目》茶碗を取り上げます。

〈静嘉堂文庫美術館〉の『酒器の美に酔う』展で特別出品されている国宝《曜変天目》。
日本美術、特に絵画は傷みやすいため、西洋美術と違って限られた期間にしか公開されません。ルーヴル美術館の《モナ・リザ》のようにいつもそこにあるわけではないので、展示されるチャンスを逃さないようにしたいもの。本連載では、今見るべき日本美術の至宝をご紹介!

今回のお宝:《曜変天目》
お宝ポイント:見る角度によって景色が移り変わる、美しく深遠な輝きを放つ斑点。今もって謎に包まれた製法とともに、世界に3つしかない希少性も。
公開期間:公開中〜2018年6月17日。
公開場所:〈静嘉堂文庫美術館〉

《曜変天目》は12〜13世紀ごろ、中国福建省にあった建窯で作られた茶碗。黒い地に濃淡の瑠璃色が星のような斑点となって散っている。黄色や白の色も見える。見る角度によって景色が移り変わる様子はひとときも動きをとめないオーロラのようだ。「曜変」は「窯変」と書いていたものに、輝きや光を意味する「曜」の字があてられた。偶然の産物で生まれたというこの模様の製法はいまもって謎であり、完全な再現には至っていない。

現在、「曜変天目」とされる茶碗は世界に3つ。そのいずれもが日本にあり、すべて国宝だ。それぞれ東京・世田谷の〈静嘉堂文庫美術館〉、大阪の〈藤田美術館〉、京都の〈大徳寺龍光院〉が所蔵している。今回、〈静嘉堂文庫美術館〉で特別公開される国宝の《曜変天目》は現存するものの中でも最高峰のものと目される。のぞき込むと宇宙の深淵に立つ気持ちになる、神秘の輝きだ。
見ていると吸い込まれそうになる《曜変天目》。闇に浮かぶ星のよう。
2009年、中国・杭州で《曜変天目》の破片が出土し、大きな話題になった。3分の2ほどが残った碗には国宝の三碗と同じような星の模様がついており、同種のものと考えられる。《曜変天目》は中国には残っておらず、その意味でも注目された。つくづく完全な形でないことが惜しまれる。

2016年の暮れにはテレビの鑑定番組に《曜変天目茶碗》が登場し、論争を巻き起こした。もし本物であれば四碗めの曜変天目ということになる。が、この茶碗については疑義を呈する研究者が複数現れ、現在では本物ではないという結論に達している。

戦国時代の日本には十碗ほどの《曜変天目》があったと言われる。うち一つは織田信長が所蔵していたが、本能寺の変で焼けてしまったという。〈静嘉堂文庫美術館〉のものは徳川将軍家所蔵だったものが淀藩主稲葉家に伝わったとされることから「稲葉天目」の別名がある。武家に愛されたために残った茶碗と、それ故に滅びた茶碗、謎めいた美を巡る運命のいたずらを感じざるを得ない。

●『酒器の美に酔う』展に合わせて、地ビールなどが楽しめるイベントも!

4月28日〜5月6日の11時〜16時30分、〈静嘉堂文庫美術館〉前庭では二子玉川の地ビールとフードやスイーツを楽しめるイベントを開催(雨天中止、5月1日休)。展示されている酒器とのマリアージュを頭の中で想像しながら味わおう。
『酒器の美に酔う』展では、他に鍋島焼の水注や青磁の杯などの酒器が陳列される。色絵や金彩、細かいところまで作り込まれた彫刻など、熟練の職人の手による精緻な技を楽しめる。

酒器の美に酔う

〈静嘉堂文庫美術館〉東京都世田谷区岡本2-23-1。〜6月17日(前期:〜5月20日、後期:5月22日〜)。10時~16時30分。月曜(4月30日は開館)、5月1日休。一般1000円。(左は《人物蒔絵三つ組盃》江戸時代/前期のみの展示)