ART
霧のアート「グリーンランド」 中谷芙二子+宇吉郎展
『カーサ ブルータス』2018年2月号より
January 20, 2018 | Art | a wall newspaper | text_Naoko Aono
世界で初めて人工的に雪の結晶を作り出した科学者、中谷宇吉郎。その次女、中谷芙二子は霧のアーティストとして知られている。絵画を学んだ後、1970年に大阪万博ペプシ館で初めて霧のインスタレーションを発表して以来、世界各地で80を超える霧のアートを手がけており、建築や音楽、ダンスなど他ジャンルのクリエイターたちとのコラボレーションも多い。
今回の2人展はグリーンランドがテーマ。晩年の宇吉郎は、その地で雪と厚さ2,000mもの氷床の研究に没頭した。雪の結晶は現在の気象を、氷に閉じ込められた空気は、古くは12世紀にまで遡る過去の気象を物語る。芙二子はレンゾ・ピアノが設計したガラスブロックの空間を氷の大地に見立てて室内での霧の実験に挑む。宇吉郎は「雪は天から送られた手紙である」という有名な言葉を残した。雪や氷から自然の声を聞いた父と、霧によって自然に小さな声で語りかける娘の対話が、ガラスブロックの小宇宙で広がる。
〈銀座メゾンエルメス フォーラム〉
東京都中央区銀座5-4-1 8F TEL 03 3569 3300。〜3月4日。11時〜20時(日11時〜19時)。無料。