フランソワ・アラールの写真が語る、ソール・ライターの人生。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

フランソワ・アラールの写真が語る、ソール・ライターの人生。

『カーサ ブルータス』2017年12月号より

写真家同士の視点が交差する、愛にあふれたオマージュ作品で、ニューヨークの冬を堪能してみては?

ライターのセルフポートレート、劣化して塗装の剥がれた壁、ヌード写真や撮影の小道具として使われていた家具、そして冬の光が差す窓。様々な時間軸が流れながらも、ライターが制作に注いだ一貫した時間が感じられる。
ニューヨークが生んだ伝説と謳われる写真家、ソール・ライターが生前55年にわたり住み家としていたイーストビレッジのアトリエ。北向きの大きな窓から優しい光が差し込む部屋でライターは絵を描き、窓からの景色、そして路上や室内で見つけた日常の断片を撮影し続けた。晩年にニューヨークの名門写真画廊、ハワード・グリーンバーグ・ギャラリーで個展が開かれ、脚光を浴びてからも変わらぬ生活を営んだライターのすべてが、このアトリエにあったといっても過言ではない。

ライターが亡くなった2年後の2015年、仏人写真家のフランソワ・アラールは、彼のアトリエが入居するビルを所有することになった友人の計らいで、そのアトリエに足を踏み入れた。

「まるで5分前まで、ソールがその場にいたような気配がした」とアラール。二人は近所に住んでいたが遭遇したことはなく、アトリエを通して初めて“出会った”。

「そのときに撮影した写真をソール・ライター財団創立者のマーギット・アーブに見せたら気に入ってくれて、彼がアトリエの中で撮ったヌード写真を見せてくれたんだ」。その後、財団の協力を得るかたちでもう一度アトリエを撮影することに。「彼の作品の中にも、私の写真の中にも同じ椅子が登場する。マーギットは彼が使用していた帽子やカメラなど、生前のソールの様々な断片を僕の感性で切り取る自由を与えてくれたんだ」

作家に捧げるラブレターのようなプロジェクトは、自然な発展を遂げ、『Saul Leiter』という一冊の写真集へと昇華された。

サイ・トゥオンブリー、ルイス・ブルジョワなど、一流アーティストのアトリエや自宅を撮影してきたアラールにとって、撮影とは好きな作品に近づく手段だという。

「自分と被写体である作家の作風の両方を反映する鏡でありたいんだ。僕にとってソールの写真といえば窓。そして冬の光、雪のニューヨーク。その条件で窓を撮影したときなど彼の視点で彼について考えた時間は、彼がすぐそばにいるように感じるひとときだった」

ライターの限られた私物しか写されていない写真ながらも、彼の息遣いや精神、そして彼がそこで過ごした平穏な日々の様子が伝わってくるのは、そこにライターの眼差しが重ねられているからなのだろう。

『Saul Leiter』

クラシックで上品な佇まい。寝室の傾いた照明が表紙を飾り、ライターの日常の痕跡が綴られた写真集の導入となっている。個人的なプロジェクトとして始まった本書を「喜びにあふれた一冊」とアラール。6,800円(Libraryman)。

フランソワ・アラール

1961年フランス生まれ。南仏アルル、パリ、ニューヨークを拠点に活動。ジャンルにとらわれず、作家の自宅や有名建築など自らの琴線に触れる場所を撮影する。歴史、ディテールや雰囲気を捉えた作風が人気を博している。

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