束芋の映像とダンスと音楽が絡み合う「映像芝居」とは? | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

束芋の映像とダンスと音楽が絡み合う「映像芝居」とは?

現代美術家、束芋が振付家・ダンサーの森下真樹とコラボレーションした『錆からでた実』が開幕! 映像とダンス、音楽が一体となって絡み合う「映像芝居」だ。束芋が初めて演出を手がけたことでも話題の舞台のゲネプロを見てきました。

大輪の牡丹が咲き、落ちる。鈴木美奈子の高い身体能力が舞台を支配する。 〈映像芝居『錆からでた実』試演会より@城崎国際アートセンター〉
束芋と森下真樹がコラボレーションするきっかけになったのは2010年に知人を介して知り合い、二人の生年月日が同じことに気づいたこと。しかも九州生まれ、血液型はO型、三人姉妹と一致することが多かった。いずれ何かを一緒につくることになるだろうな、という漠然とした予感は2013年に初演された『錆からでた実』で現実になった。翌年、2014年に再演され、今回は第三弾になる。初演と再演では森下真樹と川村美紀子、きたまりの3人がダンサーとして出演、鈴木美奈子は振付助手を務めていた。今回は森下が振付を担当、鈴木がダンサーとして出演している。

束芋はこの第三弾で初めて演出を手がけた。といっても束芋がすべてを決めるのではなく、初期段階から振付担当の森下と音楽を担当した粟津裕介や田中啓介らとともに互いにアイデアを出し合って、共同で作り上げていったのだという。
象徴的に登場する鳥かごと鳩。 〈映像芝居『錆からでた実』試演会より@城崎国際アートセンター〉
タイトルの『錆からでた実』の「錆」は鉄が酸化して安定した状態になろうとするプロセスだ。「不安定が安定を生み、さらにその安定がバランスを少しずつ崩していってまた不安定になる。同じところをぐるぐるまわっているようで少しずつ進展し、実を結ぶ。その実も静止することはなく、また次の不安定を生む」というのがコンセプトになっている。

今回の映像には新作アニメーションも多用され、初演、再演とは内容が大きく変化している。ダンサーも3人から1人になり、ミュージシャンも加わった。初演、再演に続く第三弾とはいえ、前2作とはまったく違うといってもいい内容だ。安定したバランスを壊して不安定なものへと変え、実を結ぶというプロセスはこの舞台の履歴も彷彿させる。

「錆」は老いにも重ねられている。1975年生まれの束芋と森下は去年、不惑を迎えた。人生の折り返し点ともいえる年齢だ。でも錆びた=老いた身体や精神から得られる実もあるのだ。
鳩は紗幕やダンサー、ホワイトボードの上を自在に羽ばたく。 〈映像芝居「錆からでた実」試演会より@城崎国際アートセンター〉
舞台装置はごくシンプルだ。舞台背後に紗幕が吊られ、その前に、会議室によく置かれているホワイトボードがある。

「日常、よく見かけるようなもので舞台を構成したいと思ったんです。普遍的なものにしたいと思ったので」と束芋は言う。

冒頭ではそのホワイトボードに上半身の影が映し出され、その下にダンサーの足が見える。ホワイトボードの影はまるで、ダンサーの影のように見えるけれど、実際は投影されたものだから、ダンサーの足と映し出された上半身は次第にずれていく。

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