ART
【独占】大竹伸朗の巨大アートが道後温泉に出現! 過去最大の作品に込めた思いとは?
『カーサ ブルータス』2022年2月号より
January 9, 2022 | Art, Travel | a wall newspaper | photo_Kenya Abe text_Yoshinao Yamada
営業しながら保存修理工事が進められている〈道後温泉本館〉の工事仮設物に、美術家の大竹伸朗さんが巨大アートを制作。街の新たなランドマークとなった今作について、大竹さんに現地で独占取材を敢行しました!
日本最古の温泉と言われる愛媛県松山市の道後温泉。そのシンボルである国指定重要文化財〈道後温泉本館〉は、2024年12月末まで保存修理工事が進められており、後期工事の開始とともに新たな工事仮設物が設置された。本館を覆うこの素屋根テント膜をアートに変えたのが、美術家の大竹伸朗だ。
水、熱、光、そして人や街が生み出すあらゆるエネルギーをテーマに《熱景/NETSU-KEI》と名づけられた作品は、南北約34m、東西約30m、高さ最大約20mにおよび、大竹にとって過去最大の作品となった。その大きさゆえ、街の至るところからさまざまな表情で道行く人々の目に飛び込んでくる。
高精細で表現されるのは、大竹自らが着色した紙で制作されたちぎり絵だ。巨大な壁面には繊維の不定形な切断面や重ねた色の奥行きがありありと表現される。「コロナ禍にある今だからこそ、大きさも色も、理屈抜きで力がダイレクトに伝わるものにしたかった」と大竹は言う。
水、熱、光、そして人や街が生み出すあらゆるエネルギーをテーマに《熱景/NETSU-KEI》と名づけられた作品は、南北約34m、東西約30m、高さ最大約20mにおよび、大竹にとって過去最大の作品となった。その大きさゆえ、街の至るところからさまざまな表情で道行く人々の目に飛び込んでくる。
高精細で表現されるのは、大竹自らが着色した紙で制作されたちぎり絵だ。巨大な壁面には繊維の不定形な切断面や重ねた色の奥行きがありありと表現される。「コロナ禍にある今だからこそ、大きさも色も、理屈抜きで力がダイレクトに伝わるものにしたかった」と大竹は言う。
「今回は原画のディテールを作り込むことで、紙を重ねて生まれる陰影や立体感を伝えたいと考えました。作品の制作にかけた期間はおよそ1か月。手でちぎると、思い通りにはいかない面白さがある。1つの色の下には、重ねたいくつもの違う色が見えてくる。だからこそ自分で調色した色紙を使いました。いつも使っているイタリア製の紙は、水分を吸いやすく繊維の質感がしっかり出る。ほかにも海外で集めた印刷物などを使って切り貼りしています」
3年という長期にわたる展示期間ゆえ、プレッシャーもあったと大竹は振り返る。一方でさまざまな人が訪れる観光地を意識し、「孫と祖父母の両方が楽しめる作品にしたい」と抽象表現と具象表現を織り交ぜた作品とした。
「温泉は地球のエネルギーの産物だから、それをテーマにしたいと当初から考えていました。ただし公共空間だからこそ、皆が話題にしたくなる親しみと作品性の接点を探る必要もあった。道後では馴染みのある白鷺を大きく見せながら、商店街から続く西面は街のエネルギーを表現しています」
3年という長期にわたる展示期間ゆえ、プレッシャーもあったと大竹は振り返る。一方でさまざまな人が訪れる観光地を意識し、「孫と祖父母の両方が楽しめる作品にしたい」と抽象表現と具象表現を織り交ぜた作品とした。
「温泉は地球のエネルギーの産物だから、それをテーマにしたいと当初から考えていました。ただし公共空間だからこそ、皆が話題にしたくなる親しみと作品性の接点を探る必要もあった。道後では馴染みのある白鷺を大きく見せながら、商店街から続く西面は街のエネルギーを表現しています」
大竹が拠点とするのは同じ愛媛県の宇和島市。子どもが幼いころは道後にもたびたび遊びに来たと振り返る。
「これを機会に道後まで足を運んでいただきたい。古い街並みにあえて馴染ませず、ハレーションを起こして面白さを追求しました。いくつもの面を持つ作品で、複雑な表情がある。写真で切り取るにも無限の可能性があります。ぜひそれも楽しんでほしい」
「これを機会に道後まで足を運んでいただきたい。古い街並みにあえて馴染ませず、ハレーションを起こして面白さを追求しました。いくつもの面を持つ作品で、複雑な表情がある。写真で切り取るにも無限の可能性があります。ぜひそれも楽しんでほしい」
おおたけしんろう
美術家。1955年東京都生まれ。80年代初頭より作品を発表。88年より愛媛県宇和島市を拠点に活動する。今秋に〈東京国立近代美術館〉で個展を開催予定。
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