視覚と聴覚を“翻訳する”クリスチャン・マークレーとは? | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

視覚と聴覚を“翻訳する”クリスチャン・マークレーとは?

『カーサ ブルータス』2022年1月号より

国内初の大規模個展『トランスレーティング』を開催中のクリスチャン・マークレーに、作品のコンセプトを聞いた。

絵の具と版画のコラージュ《アクションズ:バシャン バシャ ゴオオオ ザーッ ピシャッ ゲボッ(No.2)》2014。
マンガをモチーフとした木版画《叫び(泣いているオレンジ)》2018。
音や映像、そしてマンガの擬音もコラージュして作品にするアーティスト、クリスチャン・マークレー。彼自身、ターンテーブルを使う音楽家から現代美術の作家へと変化(トランスレート)してきた。コンセプチュアルなアーティストとなる転機となったのが、ジャケットもなくむき出しで発売した《レコード・ウィズアウト・ア・カバー》だったのではないだろうか。

「非常にはかない空気の振動を、物理的なものに換えて何度でも反復して聞けるようにしたのがレコードです。しかし、物として傷ついていくので反復が永遠に続くわけでもない。そこで、完璧に見えても不完全なものだということを示す《レコード・ウィズアウト・ア・カバー》を制作しました。その後何年も取り組んできたコンセプトが凝縮されている、自分のキャリアの中でも重要な作品です」

こう語る作家だが、今回はレコードや映像など記録媒体と同等の比重で絵画や版画を展示している。
演奏するために切り貼りした《リサイクルされたレコード》。
《アブストラクト・ミュージック》。
大友良英所蔵の《レコード・ウィズアウト・ア・カバー》1985(左)と再発盤。
「絵画はルールに基づいてどんどん描いていくことが多いです。たとえば《アブストラクト・ミュージック》のきっかけは、オーネット・コールマンのレコード『フリー・ジャズ』のジャケットにジャクソン・ポロックの抽象画《ホワイト・ライト》が使われているのを見て、実験音楽が抽象絵画を自分たちの音楽のイメージとして貼りつけるのは面白いと思ったことでした。同じように抽象絵画が使われたジャケットを集め、文字の部分を抽象絵画の手法を真似しながら絵の具で消し、誰のどの作品だか分からないようにすることをルールとしています。つまりアクションペインティングのような偶然性に任せたものとは真逆で、かなり綿密に計画しているのです」
東京で制作された《リサイクル工場のためのプロジェクト》2005。壁面を一周するテキストは《ミクスト・レビューズ》1999〜。
レコードジャケットによくある男性指揮者の上半身と無名の女性の下半身をコラージュした《ジャスト・テイク・マイ・ボディ(「ボディ・ミックス」シリーズより)》1991。
旅行中に撮った音符のある風景を楽譜として提示したグラフィック・スコア作品《シャッフル》2007。
コロナ禍でロックダウン中のロンドンで、ひとりで制作したコラージュ《フェイス(全面に)》2020。
マンガの擬音を使った作品も多い。《アクションズ》は「擬音のコラージュを元に、キャンバスに絵の具をぶつけてその通りの音を立て、上から元の擬音文字を刷る」手法だという。行為に伴う音の痕跡が、翻訳されて残っている。

実はこのページも、インタビューした内容を元に作家のコンセプトを記事に変換したもので、もはや作品の一部なのかもしれない。

クリスチャン・マークレー

1955年米国生まれ、スイスで育つ。79年NYでターンテーブルを使った演奏を発表。2011年、映像作品《ザ・クロック》で第54回ヴェネチアビエンナーレ金獅子賞を受賞。
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