横尾忠則の手で甦った写楽を、天王洲の新ギャラリーで観る。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

横尾忠則の手で甦った写楽を、天王洲の新ギャラリーで観る。

活動期間わずか1年ほど、正体についても謎が多い浮世絵師、東洲斎写楽。その代表作をモチーフに横尾忠則が新作版画を発表する。これまで横尾が描いたポートレイトにマスクを付け加える「マスクポートレイト」とともに、横尾の新しい展開を見せる個展だ。

アトリエでの横尾忠則。自作のマスクと、イッセイミヤケとのコラボレーションによるブルゾンという出で立ちだ。
東京・東品川でアートに関するさまざまな場を生み出している〈TERRADA ART COMPLEX〉。8つのギャラリーやアーティストのためのスペースなどがある〈TERRADA ART COMPLEX I〉に加えて2020年9月、〈TERRADA ART COMPLEX II〉がオープンした。そこに2021年1月、新たに仲間入りしたのが〈YUKIKO MIZUTANI〉だ。
東洲斎写楽《「とら屋虎丸」二代目嵐龍蔵の奴なみ平》をモチーフにした油性木版画シリーズ。
滑稽なほど誇張された写楽の表現が生きる。
〈YUKIKO MIZUTANI〉のオーナーは長年アートマーケットに関わる仕事をしており、若いスタッフと新しいアートを生み出す場を持ちたいと考えていた。その思いが結実したのが〈TERRADA ART COMPLEX II〉1階にある天井高6メートルもあるダイナミックな空間だ。現代美術全般を扱うが、木版画(浮世絵)の優れた摺り師と出会い、現代美術作家とのコラボレーションを企画する。ギャラリーのオープニングにあたり、声をかけたのが横尾忠則だった。その理由について、オーナーはこう語る。

「横尾さんは伝統から逸脱しているように見えて、伝統を活かすこともできる方です。横尾さんなら今までのものを独自の形で受け継いで、見たこともないものを見せてくれるに違いないと思いました」
《「とら屋虎丸」二代目嵐龍蔵の奴なみ平》をもとにした作品は大判の油性木版画5点が1セットになって販売される。
個展のタイトルは『slip off slip - 摺れ摺れ草 - With Mask Portrait』。今回展示されるのは東洲斎写楽の大首絵をモチーフにした木版画と、文豪・文化人らのポートレイトや横尾がかつて描いた女性の絵にマスクを付け加えたマスクポートレイトのシリーズ、新作のマスクをモチーフにした3点の油絵だ。写楽のシリーズはもともと、日本舞踊の舞台美術のために作られたもの。今回、木版画を制作するにあたって再び写楽をモチーフにした理由を横尾はこう語る。

「写楽は役者の個性を抽出してオーバーなぐらいに表現している。他の絵師にはないデフォルメでモデルの性格など、内面的なものまで描き出しているのが面白い。それに写楽という存在自体がミステリアスですよね。突然現れて独特の絵で世間をかきまわして、いなくなってしまう。トリックスターのようなキャラクターだと思います」

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