ART
西野逹が天王洲をジャック!? 10年ぶりの個展開催中。
| Art | casabrutus.com | photo_Keizo Kioku text_Rie Nishikawa editor_Keiko Kusano
屋外で大規模プロジェクトを得意とする西野逹が10年ぶりにギャラリーでの展覧会を東京・天王洲のギャラリー〈ANOMALY〉で開催中。さらに同エリアで2月15日からはじまる『大阪万博50周年記念展覧会』にも参加。2月の天王洲は西野逹祭り!?
シンガポールのマーライオンを巨大な置物のようにしたホテルを建設したり、ニューヨークのコロンブス像を使って街中に巨大なリビングルームを出現させるなど、モニュメントや街灯を丸ごと取り込む部屋を作り、固定概念を覆す大型インスタレーションが行なってきた西野達。パブリックをプライベートに逆転する「内と外の転換」をテーマにする。
「1997年から、普段あまりアートに興味ない人に見てもらいたくて屋外で作品発表してる。今までそれで突っ走ってきたので、ギャラリーの展示は10年ぶりになるよ。今回は普段の逆、多くの作品が屋外のものを室内に持ち込むのをコンセプトにしてる」(西野逹)
「1997年から、普段あまりアートに興味ない人に見てもらいたくて屋外で作品発表してる。今までそれで突っ走ってきたので、ギャラリーの展示は10年ぶりになるよ。今回は普段の逆、多くの作品が屋外のものを室内に持ち込むのをコンセプトにしてる」(西野逹)
街灯や車を使った作品、逹仏など、西野を代表する作品が並ぶ。
「石膏像のシャンデリアは、俺がアートの基本的な姿勢と考える『破壊と創造』をダブルで具現化したもの。西洋の美の基準であるギリシア彫刻をハンマーで叩き壊して再構成。さらにギリシア彫刻はその完璧なフォルムの陰影を自然光で眺めるものだけど、その見方をも壊すために人工のLED照明を付けた。なのでこの作品では、シャンデリアは下ではなく彫刻側に向けられているというわけ」
「石膏像のシャンデリアは、俺がアートの基本的な姿勢と考える『破壊と創造』をダブルで具現化したもの。西洋の美の基準であるギリシア彫刻をハンマーで叩き壊して再構成。さらにギリシア彫刻はその完璧なフォルムの陰影を自然光で眺めるものだけど、その見方をも壊すために人工のLED照明を付けた。なのでこの作品では、シャンデリアは下ではなく彫刻側に向けられているというわけ」
生きている木の枝に仏像を彫った《達仏》は、まさしく生きている仏像であり、彫刻作品だ。
「子供の頃から、アートと宗教に興味があって。なぜ人間には宗教が必要なのかと。いまだにその興味は尽きなくて、時々このテーマに戻ってる」
もともと自身の精神をも売っているような気がして、作品を売ることに抵抗があるという。西野が手がける大規模インスタレーションは売ることができない作品だ。
「デビューから、売ることがほとんど不可能な作品を作り続けてる。屋外のインスタレーションや豆腐で仏像を作ったこともそう。この《達仏》も買う人が出てくる可能性もゼロじゃないけれど、現状を留められずに変化していくという、非常にアートマーケットに乗りにくい作品になってる。仏像が割れることも考えられるし、木そのものが枯れてしまうかもしれない。そういった作品は俺なりの金儲け主義のアートシーンに対するひとつの挑戦でもあるんだ」
「子供の頃から、アートと宗教に興味があって。なぜ人間には宗教が必要なのかと。いまだにその興味は尽きなくて、時々このテーマに戻ってる」
もともと自身の精神をも売っているような気がして、作品を売ることに抵抗があるという。西野が手がける大規模インスタレーションは売ることができない作品だ。
「デビューから、売ることがほとんど不可能な作品を作り続けてる。屋外のインスタレーションや豆腐で仏像を作ったこともそう。この《達仏》も買う人が出てくる可能性もゼロじゃないけれど、現状を留められずに変化していくという、非常にアートマーケットに乗りにくい作品になってる。仏像が割れることも考えられるし、木そのものが枯れてしまうかもしれない。そういった作品は俺なりの金儲け主義のアートシーンに対するひとつの挑戦でもあるんだ」
巨大な“街灯”がソファや冷蔵庫、車を串刺しにしている。
「俺の中では“街灯”はすごく面白いモチーフ。何メートルかおきに立っているというのに、さらに夜になると光るというのに、それを意識して歩く人はいない。同じことが、俺がよく作品に取り入れる街の銅像やモニュメントにも言える。存在はしているけれど、忘れられている。そんな街灯が日常生活の主役である冷蔵庫やソファ、ベッド、車を串刺しにする。地味で目立たない受動的な“街灯”の立場を逆転した作品なのです」
ところで、展覧会名であり、作品名にもなっている『やめられない習慣の本当の理由とその対処法』とは?
「要するにこれって、俺のやってきたことの表明でもあるんだ。俺のやめられない習慣はアート、本当の理由もアート、その対処法は作品を作り続けること。つまりアート漬けの俺の生活を表現したってわけ」
「俺の中では“街灯”はすごく面白いモチーフ。何メートルかおきに立っているというのに、さらに夜になると光るというのに、それを意識して歩く人はいない。同じことが、俺がよく作品に取り入れる街の銅像やモニュメントにも言える。存在はしているけれど、忘れられている。そんな街灯が日常生活の主役である冷蔵庫やソファ、ベッド、車を串刺しにする。地味で目立たない受動的な“街灯”の立場を逆転した作品なのです」
ところで、展覧会名であり、作品名にもなっている『やめられない習慣の本当の理由とその対処法』とは?
「要するにこれって、俺のやってきたことの表明でもあるんだ。俺のやめられない習慣はアート、本当の理由もアート、その対処法は作品を作り続けること。つまりアート漬けの俺の生活を表現したってわけ」
さらに、2月15日からは9日間限定で『大阪万博50周年記念展覧会』が同じ天王洲で開催されるが、そこで西野の屋外大型作品が展示されるという。
「5年後の大阪万博の時には『ダブル通天閣プロジェクト』をやりたいな。通天閣の横に、まったく同じ通天閣を工事現場でよく見かける足場の単菅で建てるというもの。ちょうどいい場所があって、専門家の試算では約2億円でできるらしい」
東京タワーと通天閣を入れ替えるという奇想天外な逆転のプランなど、ワクワクするようなアイディアがまだまだたくさんあるという。西野逹はこれからも追いかけ続けたい作家だ。
関連記事:大阪万博が残した記録とアートに、過去と未来を感じる9日間。
「5年後の大阪万博の時には『ダブル通天閣プロジェクト』をやりたいな。通天閣の横に、まったく同じ通天閣を工事現場でよく見かける足場の単菅で建てるというもの。ちょうどいい場所があって、専門家の試算では約2億円でできるらしい」
東京タワーと通天閣を入れ替えるという奇想天外な逆転のプランなど、ワクワクするようなアイディアがまだまだたくさんあるという。西野逹はこれからも追いかけ続けたい作家だ。
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『やめられない習慣の本当の理由とその対処法』
〈ANOMALY〉
東京都品川区東品川1-33-10 Terrada Art Complex 4F TEL 03 6433 2988。〜2月24日。11時〜18時(金〜20時)。日曜・月曜・祝日休。無料。
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西野 逹
にしの・たつ 1960年愛知県生まれ。武蔵野美術大学終了後、ドイツに渡り、ミュンスター芸術アカデミーで彫刻を学ぶ。「シンガポールビエンナーレ 2011」でマーライオンを取り込んでホテルを建設した「The Merlion Hotel」(2011年)、マンハッタンに立つコロンブス像の周辺をリビングルームにした「Discovering Columbus」(2012年)、大分・別府の大規模なプロジェクト「BEPPU PROJECT」(2017年)など、国や街のシンボルと関係する大規模なプロジェクトを展開。2017年度「芸術選奨美術部門文部科学大臣賞」を受賞。
photo_Sachiko Horasawa
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