「シュルレアリスム」100年の歴史をひもとく。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

「シュルレアリスム」100年の歴史をひもとく。

箱根〈ポーラ美術館〉にて、シュルレアリスム誕生から100年の歴史をたどり、また、日本における「超現実主義」の広がりをひもとく展覧会が開催中だ。

photo_Ken Kato
2019年は、「シュルレアリスム」誕生から100年の節目にあたる。箱根〈ポーラ美術館〉で開催中の『シュルレアリスムと絵画』展では、シュルレアリスム運動からどのようにシュルレアリスム絵画が生まれたか、さらに、日本における「超現実主義」への展開をひもとく。

フランスの詩人アンドレ・ブルトンが中心となって推し進めた「シュルレアリスム」は、理性を中心とする近代的な考え方を批判し、意識では捉えきれない無意識の世界(新しい現実)を表現することを目指した、20世紀の芸術に大きな影響を及ぼした運動のひとつだ。日本語では「超現実主義」と訳され、日本の芸術にも独自の発展を促した。

ブルトンは、1924年、「シュルレアリスム宣言」を発表しグループとしての活動を開始。彼らはフロイトの提唱した精神分析学の影響を受けて無意識の世界を探究することで、「超現実」という新たなリアリティを追い求めた。やがては詩や思想だけではなく絵画の分野にも拡大。ドイツ出身の画家マックス・エルンスト(1891-1976)による実験的な作品に美しさを見いだした。またスペインからこの運動に加わったサルバドール・ダリ(1904-1989)は「偏執狂的=批判的」方法という独自の理論にもとづいて絵画を制作。美術だけではなくファッション界をも巻き込む大きな流行を作り出していく。

日本においては、瀧口修造(1903-1979)が、1928年にブルトンが発表した《シュルレアリスムと絵画》を、早くも1930年に日本語に翻訳。これがきっかけとなり、1930年代を通して「超現実主義」という訳語のもと最新の前衛美術のスタイルとして一大旋風を巻き起こした。しかし、こうした広がりのなかで「シュルレアリスム」は、第二次世界大戦へと向かう時代の閉塞感と響き合い、しだいに現実離れした奇抜で幻想的な芸術として受け入れられていく。そして、東洋的な思想と混ざり合いながら、独自の絵画表現や日本独特の「シュール」という感覚の誕生に至った。
北脇昇《独活》1937年(昭和12)油彩/カンヴァス 東京国立近代美術館蔵
三岸好太郎《海と射光》1934年(昭和9) 油彩/カンヴァス 名古屋市美術館蔵
古賀春江《白い貝殻》1932年(昭和7) 油彩/カンヴァス ポーラ美術館蔵
成田亨《ウルトラマン初稿》1966年(昭和41) ペン、水彩/紙 青森県立美術館 (c) Narita/TPC 前期展示(12月15日〜2月5日)
『シュルレアリスムと絵画』展では、約100点の絵画、版画、映像作品を通し、シュルレアリスム誕生から100年の歴史をたどり、また、「シュール」と呼ばれる表現の広がりにも焦点を当てる。

展示は4章に分かれており、誕生から戦後までシュルレアリスムの変遷を紹介している。

第1章では ジョルジョ・デ・キリコ 《福音書的な静物》、ジョアン・ミロ 《夜の人物と鳥》など、シュルレアリスムの創成期に関わりのあった作品を展示。第2章では、絵画におけるシュルレアリスム運動を代表しながらも、対照的な存在であるエルンストとダリにフィーチャーする。第3章では、三岸好太郎 《オーケストラ》、古賀春江《白い貝殻》など、1930年代、第二次世界大戦が迫り不穏な閉塞感が漂う日本において描かれた、超現実主義の作品を集めた。第4章では、「シュルレアリスムの戦後」と題し、吉原治良、瑛九、岡上淑子など、戦前にシュルレアリスムを経験した画家たちが追求した独自の抽象的な表現について紹介。今日的な我々の「シュール」な感覚に影響を及ぼした、瑛九《小鳥》、吉原治良 《縄をまとう男》などの作品を展示している。
photo_Ken Kato
photo_Ken Kato
photo_Ken Kato
なお、日本独自の「シュール」の展開をしめすものとして、シュルレアリスムに通底する現代美術作品も紹介。成田亨のウルトラマン原画や現代美術家の束芋(たばいも)の作品を展示している。束芋の作品が展示された展示室の幅9mの壁を活用したウォールドローイングは、同展のために作家本人が描いたものだ。
束芋 《dolefullhouse》 2007年 ヴィデオ・インスタレーション (c) 2019 Tabaimo
束芋のウォールドローイング。 photo_Ken Kato
束芋の展示風景。 photo_Ken Kato
photo_Ken Kato

『シュルレアリスムと絵画─ダリ、エルンストと日本の「シュール」』

〈ポーラ美術館〉
神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285 TEL 0460 84 2111。12月15日~2020年4月5日。9時~17時(最終入館は閉館の30分前まで)。会期中無休。一般1800円。

AIがあなたにおすすめ

※過去の記事も表示されます