代表作が勢揃い! フィリップ・パレーノ、“オブジェが語る”日本初個展。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

代表作が勢揃い! フィリップ・パレーノ、“オブジェが語る”日本初個展。

哲学的な作品をつくることで知られるフランスのアーティスト、フィリップ・パレーノの日本初となる個展が〈ワタリウム美術館〉で開催中。その場に行かないとわからない仕掛けがたっぷりの、必見の展覧会です。

『フィリップ・パレーノ展 オブジェが語りはじめると』2階・会場風景。
これまで照明器具やスピーカー、インスタレーションなど様々なメディアを用いた展覧会を海外の美術館やアート機関で開催してきたパレーノ。ロンドンの〈テートモダン〉ではこうした照明やスピーカーのコントロールを培養したバクテリアに任せた展覧会で世間の度肝を抜いた。〈ワタリウム美術館〉では意味深なタイトル「オブジェが語りはじめると」がほのめかすように、展示されている“オブジェ”たちが突拍子もなく音を出し始めるという仕組みになっている。
『フィリップ・パレーノ展 オブジェが語りはじめると』2階から3階を見上げた会場風景。写真右にあるのは氷の彫刻作品《リアリティー・パークの雪だるま》。氷なので、設置してから数日で溶けてしまう。会期中、何度か展示を予定している。
展覧会の始まりの空間である2階には、ランプシェードを被せた照明オブジェが2つ、そして人工石のオブジェ、天井に届きそうな高さの透明アクリルガラス板のオブジェがまるで舞台のセットのように置かれている。これらのオブジェたちは、美術館のそこかしこに取り付けられたセンサーが感知した屋外の風向きや気圧、太陽光、館内の人の出入りに反応し、点灯、点滅し、音が出るようにプログラミングされている。また、オブジェ同士も互いに反応して光ったり、音を出すようにプログラミングされているので、屋外の自然環境、そして館内の人の動きとオブジェたちすべてがつながってその場かぎりの“状況”を生み出すことになる。
《マーキー》フィリップ・パレーノ。半透明のプレキシグラス、電球、ネオン管、DMXレコーダー、調光器からなる作品。
半透明のアクリル板に設置された電球、13本のネオン管、2つの円形ネオンが、不規則に点滅を繰り返し、音も出す。その動きは、美術館のそこかしこに取り付けられたセンサーによって点灯、点滅し、音が出るようにプログラミングされている。
このようにパレーノにとってアートとは、彫刻やオブジェなどの単体ではなく、それぞれが関連し合った集合体となって成り立つものだそうだ。アートに対するこうした考えについて次のように語る。

「アートピースは展覧会という舞台を構成する要素の一つです。どんな展覧会を作りたいか筋書きを組み立て、その筋書きに合うアートピースを過去に作ったものの中から選び、なければ新たに作ります。小説を書く作業と似ていると思います。作家は主人公を作り上げてから物語を書くのではなく、まず主題を決めて、そこから必要な登場人物像を作っていくものでしょう?」

アートピースは“物質”であるオブジェとして存在し、展覧会の内容に応じて“役”を与えられることになる。
《吹き出し(白)》(写真上)と《壁紙マリリン》フィリップ・パレーノ。不規則な光の点滅とともに、絶え間なく空間にサウンドが響いている。
壁紙は燐光性インクなので、暗くなったときには壁紙が際立って見える。
人間以外の生命体や分身ロボット、AIの存在が人間の暮らしに欠かせない今、オブジェが何かしらのメッセージを語ることは不思議ではないかもしれない。しかし、展示を観察していて気付いたことがある。それは、すべてが”抵抗“のひとつの姿であるということだ。照明器具の電球やネオン管が光るのは電流の抵抗によるものであるし、点滅する光とともに鳴り出す音は空気の抵抗の姿だ。雪だるまの姿をした氷の彫刻《リアリティー・パークの雪だるま》が展示中、溶けてなくなる姿も自然への抵抗の現れだ。また、4階の天井にびっしりと浮かぶ風船のオブジェ《吹き出し》は、元は労働者組合員のデモンストレーション用のプラカードとして作られたもので、これもレジスタンスの形と言える。

パレーノは展覧会のシナリオについてつまびらかにしない。「同じ小説を読んでも、人それぞれ自分の抱えるものや経験によって解釈の仕方は異なるでしょう。同様にアートの感じ方も一人ひとりに委ねたいのです。そこにアートの可能性があると思います」と言う。

ぜひ展覧会で深淵で詩的なオブジェたちの語りに耳を傾けてほしい。
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