トム・サックスの“ティーセレモニー”展、東京を席巻中! | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

トム・サックスの“ティーセレモニー”展、東京を席巻中!

〈東京オペラシティ アートギャラリー〉で始まった現代美術家トム・サックスの展覧会が話題を呼んでいる。身近で簡素な素材を駆使し、ユニークな視点で茶の湯を捉え直した展覧会をリポートします。

トム・サックス流の「内露地」(Inner Garden)の様子。手前左はダンボール筒や綿棒、タンポンなどで松の枝葉を作った《Bonsai》、奥に工事現場の立ち入り禁止柵やトタン屋根、ポリスチレン断熱材などで作った茶室《Tea House》。右は五重の塔《Stupa》。 photo_Tadashi Ono
トム・サックスは1966年生まれ、ニューヨークを拠点とするアーティストだ。世界的ブランドやデザイン、モダニズムのアイコンから着想を得た作品で知られる。ありふれた簡素な素材(プライウッドや不織布、スチレンボードなど)を使い、DIYさながらの手跡を残しながら、自身のスタジオで作品を製作している。

今回、日本で初めての美術館での大規模な個展となる『ティーセレモニー』は、2012年『スペース・プログラム : MARS』展(パークアヴェニュー・アーモリー/ニューヨーク)を礎としている。トムの数あるフェティシズムのひとつである「スペース・プログラム」が火星探査に赴き、過酷なミッションをこなす宇宙飛行士たちが日本の伝統的な茶の湯を行うことでストレスを緩和させるという展示とデモンストレーションだ。その後「ティーセレモニー」の部分だけを発展させ、2016年にニューヨークの〈イサム・ノグチ美術館〉で同タイトルの展覧会が開催された。
「シアター」のスクリーン前に用意されたパイプ椅子《NASA Chair》も作品だ。 photo_Housekeeper
まず会場に入ると左手に「シアター」がある。新作《Movie Dome》の円蓋の下のスクリーンで、「ティーセレモニー」の様子を撮影した14分弱の映像が見られる。さらに先へ進むと、石碑かと見紛うダンボール製の作品《Narrow Gate》が立ちはだかる。これはイサム・ノグチの彫刻にオマージュを寄せたものだ。その左手の一室は「ヒストリカル・ルーム」で、トムのこれまでの作品の一部が展示されている。
〈Narrow Gate〉。石の彫刻のノミ跡や凸凹などの質感を徹底的にダンボール紙で再現している。 photo_Tadashi Ono
「ヒストリカル・ルーム」に展示された《Mizuya Back Up Unit》。棚の上、本物の鉄製の風炉釜(左端)のフォルムを完璧に紙で模してからブロンズで鋳造する(中央と右端)という執拗さにびっくり。 photo_Tadashi Ono
〈Narrow Gate〉。石の彫刻のノミ跡や凸凹などの質感を徹底的にダンボール紙で再現している。 photo_Tadashi Ono
「ヒストリカル・ルーム」に展示された《Mizuya Back Up Unit》。棚の上、本物の鉄製の風炉釜(左端)のフォルムを完璧に紙で模してからブロンズで鋳造する(中央と右端)という執拗さにびっくり。 photo_Tadashi Ono

●外露地から内露地、そして茶室へ。

門をくぐった先、手前にあるのが《Ishidôrô》。奥は飛行機内に設置されるトイレを雪隠に見立てた作品《LAV3》の背面。向こうへ回り込むと便器が見える。 photo_Tadashi Ono
工事現場や立ち入り禁止地区に置かれるオレンジ色の斜めストライプのCon Edison社仕様の柵(トムの作品に頻繁に使われる素材)に、トタン波板の屋根をのせた門をくぐると「Outer Garden(外露地)」へ入る。キャンプ用オイルランプを仕込んだ「石灯篭」《Ishidôrô》、鯉が泳ぐ池《Pond Berm》、茶室に入る前に客が腰掛ける「待合」《Waiting Arbor》、さらには飛行機内のユニットトイレを「雪隠」(=便所)に見立てた《LAV3》が置かれ、奇想天外な茶庭が展開する。古い茶庭ならともかく、現在では茶庭に雪隠を設けること自体まれなのに、その存在を知っているトムの知識に舌をまく。