アーティストが作品を選んだら? “横美”30周年記念展へ|青野尚子の今週末見るべきアート | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

アーティストが作品を選んだら? “横美”30周年記念展へ|青野尚子の今週末見るべきアート

開館30周年を記念して開かれている〈横浜美術館〉のコレクション展は、ひと味違う。4人のアーティストがそれぞれの視点からコレクションをセレクト、さらに自作を追加しているのだ。展示室をフル稼働、ロビーや館外にもアートが並ぶスペシャルな企画です。

ゲスト・アーティスト、淺井裕介の展示室。円形の展示室の壁いっぱいに淺井が描いた泥絵《いのちの木》(2019年、展示風景)と、彼がセレクトした絵が踊るように並ぶ。
丹下健三の設計で建てられ、1989年に開館した〈横浜美術館〉。刺激的な企画展のほか、2011年からは『横浜トリエンナーレ』のメイン会場としても使われてきた。コレクションも充実、シュルレアリスムや写真を中心にクオリティの高い収蔵品を増やしている。〈横浜美術館〉では、通常、全館のおよそ半分を企画展に、半分をコレクション展としているのだが、今回の開館30周年記念展『Meet the Collection アートと人と、美術館』では全展示室を使っている。

この展覧会はいわゆるコレクション展だが、単に収蔵品を並べているだけではない。7つに分かれたセクションのうち4つを束芋、淺井裕介、今津景、菅木志雄の4人のゲスト・アーティストが作品をセレクト、合わせて〈横浜美術館〉のコレクション以外の自作を見せる。アーティストの視点から他の作家の作品を見るとどうなる? 自分の作品とどう絡める? 結果は学芸員のセレクトとはだいぶ違ったものになった。4人のアーティストがそれぞれにまったく違う空間を見せてくれるのだ。
淺井裕介《いのちの木》(2019年、部分)。泥絵に使った土のうち一部は、横浜にある淺井の母校で入手したもの。陶芸科で不要になった陶土だ。捨てられていたものがまた甦っている。
枝から葉が生えるように顔が伸びる。
一つの生命からまた新しい生命が生まれているよう。
設備のカバーにも淺井の絵が。
淺井裕介《いのちの木》(2019年、部分)。泥絵に使った土のうち一部は、横浜にある淺井の母校で入手したもの。陶芸科で不要になった陶土だ。捨てられていたものがまた甦っている。
枝から葉が生えるように顔が伸びる。
一つの生命からまた新しい生命が生まれているよう。
設備のカバーにも淺井の絵が。
たとえば淺井裕介は円形をした特徴的な展示室の壁全体に土を使って絵を描き、その上に館のコレクションを展示している。彼のセレクトは彼自身もよく描く動植物が中心だが、ミロの絵の隣に作者不詳かつ、淺井によると「おそらく今まで展示されたことのない絵」が並んだりしている。日本画家による素描だ。

「主役級、スター級の絵も、“初めまして”な絵も平等に並べたいと思ったんです」
淺井裕介《いのちの木》(2019年、部分)。左のジョアン・ミロ《花と蝶》の右に動植物画が並ぶ。右の絵は作者不詳だが、かなりの力量の持ち主だ。
小作青史《風車の子供》の風車モチーフが泥絵で再現されている。

広い壁面を描くのに、面相筆というもっとも細い筆まで使っている。細部まで描き込むことで絵に生命が吹き込まれる。
淺井と制作スタッフが使った土の絵の具「大地の色見本」。土にこれだけ豊かな色のバリエーションがあることに驚かされる。
淺井裕介《いのちの木》(2019年、部分)。左のジョアン・ミロ《花と蝶》の右に動植物画が並ぶ。右の絵は作者不詳だが、かなりの力量の持ち主だ。
小作青史《風車の子供》の風車モチーフが泥絵で再現されている。
広い壁面を描くのに、面相筆というもっとも細い筆まで使っている。細部まで描き込むことで絵に生命が吹き込まれる。
淺井と制作スタッフが使った土の絵の具「大地の色見本」。土にこれだけ豊かな色のバリエーションがあることに驚かされる。
泥絵の中にはコレクションの絵に描かれたモチーフから引用したり反復したりしたものもある。場所によっては面相筆という極細の筆で描かれたものも。一見すると抽象的な模様に見えるパターンの中に隠れている動物や植物を探すのも楽しい。地の色は泥ではないが、土を思わせる深い赤だ。

「原始の洞窟のイメージです。赤は血の色でもあり、鉄の色でもある。人が最初に描いた色なんじゃないかと僕が思っている色です」

壁は白地にする予定だった。が、白だと「僕の絵とコレクションの絵の間に距離が生まれる気がして」(淺井)、最後の段階で変更したという。