職人の知恵と執念で復元した名古屋城〈本丸御殿〉へ参上! | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

職人の知恵と執念で復元した名古屋城〈本丸御殿〉へ参上!

10年がかりで復元工事が行われていた名古屋城の〈本丸御殿〉がついに完成。いよいよ6月8日から一般公開が始まります。どこよりも早く、将軍様が過ごした奥の奥までご案内!

名古屋城は徳川家康が一番かわいがっていた九男であり、初代尾張藩主、徳川義直のために作られた城。1610年(慶長15年)から〈天守閣〉と〈本丸御殿〉の工事が始まり、1615年(慶長20年)には御殿で義直の婚儀が行われた。明治になって廃城の危機を迎えるが金シャチがウィーン万国博覧会などに出品されて話題となり、保存運動もあって取り壊しを免れる。1930年(昭和5年)には城郭として初めて国宝に指定された。
堂々完成した〈本丸御殿〉。背後の〈天守閣〉は現在閉館中。木造で復元し、2022年に再オープンする予定だ。〈本丸御殿〉と同じく焼失前のガラス乾板写真や豊富に残る図面などを元に、建造当時の姿を復活させる。
しかし1945年(昭和20年)5月、終戦を目前にして空襲により〈天守閣〉も〈本丸御殿〉も焼失してしまう。1959年(昭和34年)、〈天守閣〉は火災に強い鉄筋コンクリート造で再現されたが、〈本丸御殿〉はそのまま再建されることはなかった。いつかは〈本丸御殿〉越しに〈天守閣〉を望む景色を見たい。名古屋市民の悲願がついに叶うことになったのだ。総工費150億円のうち50億円は市民の寄付によるもの。そこからも、名古屋城がいかに愛されているかがわかる。
戦災で焼失する前に撮られた、〈本丸御殿〉の車寄・正面玄関のガラス乾板写真。唐破風の車寄が特徴だ。
完成した〈本丸御殿〉。建造当時の姿を忠実に再現している。
戦災で焼失する前に撮られた、〈本丸御殿〉の車寄・正面玄関のガラス乾板写真。唐破風の車寄が特徴だ。
完成した〈本丸御殿〉。建造当時の姿を忠実に再現している。
〈本丸御殿〉は総面積3100平方メートル、30を超える部屋数を誇る書院造の建造物だ。工事が始まったのは2009年、10年がかりの復元工事となる。これまでに第1期が2013年、第2期が2016年に公開されている。6月に公開されるのは第3期工事のエリアだ。1期には〈玄関〉や〈表書院〉が、2期には〈対面所〉などが復元された。〈表書院〉は城の主である義直が正式な謁見をするために使われたもの。〈対面所〉は身内や家臣など、私的な対面のための場だ。
御殿越しに〈天守閣〉を望む、戦前の写真。今回の第3期工事でこの風景が甦る。
今回、第3期工事で公開されるエリアは1634年(寛永11年)、三代将軍家光の上洛に合わせて新築された建物。家光が滞在した〈上洛殿〉やお風呂〈湯殿書院〉・厠(トイレ)などがある。江戸幕府将軍のためだけに建造されたものであり、世が世なら我々庶民は近づくことすらできなかっただろう。
復元された〈玄関 一之間〉。虎が描かれているので別名「虎之間」とも呼ばれていた。
当時、日本には虎はいなかったので毛皮を参照して描いていることが多い。全体に猫っぽいが、1本ずつ丁寧に描かれた毛並みや牙に力がみなぎる。
ガラス乾板で撮影された、戦前の〈玄関 一之間〉の写真。勇壮な虎が出迎える。
復元された〈玄関 一之間〉。虎が描かれているので別名「虎之間」とも呼ばれていた。
当時、日本には虎はいなかったので毛皮を参照して描いていることが多い。全体に猫っぽいが、1本ずつ丁寧に描かれた毛並みや牙に力がみなぎる。
ガラス乾板で撮影された、戦前の〈玄関 一之間〉の写真。勇壮な虎が出迎える。
新しくなった〈本丸御殿〉は元の建物と同じ木造で、障壁画なども再現されている。釘隠しなどのディテールまでオリジナルに忠実だ。焼けてしまってから数十年もたっているのに元の姿に戻すことができるのは江戸時代の図面や記録に加え、国宝に指定された際などに撮られた写真や実測図があったから。写真は保存性の高いガラス乾板で撮られていた。
〈表書院 一之間〉から〈上段之間〉を見る。〈表書院〉は部屋に応じて早春・春・秋・夏の季節を描いた花鳥画や走獣画で飾られた。
戦前の写真で〈表書院 三之間〉から〈二之間〉を見たもの。復元後と見比べてもほぼ変わりない。
〈表書院 上段之間〉、床と違棚。
〈表書院 一之間〉から〈上段之間〉を見る。〈表書院〉は部屋に応じて早春・春・秋・夏の季節を描いた花鳥画や走獣画で飾られた。
戦前の写真で〈表書院 三之間〉から〈二之間〉を見たもの。復元後と見比べてもほぼ変わりない。
〈表書院 上段之間〉、床と違棚。
障壁画で取り外しができるものは空襲前に疎開させていたので、今も1,049面が残っている。今回の復元にあたっては「改めて模写する」という形をとった。絵の具が剥落・退色しているところも顔料などを分析し、元の色を取り戻すことで描かれた当時の鮮やかさを甦らせている。建物も障壁画も400年前のままに甦り、江戸時代と同じ景色を眺めることができる。