ARCHITECTURE
ドーシのスタジオ〈サンガト〉は建築を学ぶための寺院です。
『カーサ ブルータス』2018年6月号より
May 10, 2018 | Architecture | a wall newspaper | text_Yuka Uchida
今年のプリツカー賞を受賞した建築家バルクリシュナ・ドーシ。彼の人柄を知るヒントはスタジオ〈サンガト〉にありました。
インドの近代建築に大きく貢献したバルクリシュナ・ドーシ。若き日にパリでル・コルビュジエに学び、アーメダバードのプロジェクトを現地のチーフデザイナーとして支えたほか、独立後はルイス・カーンとも仕事を共にし、大きな影響を受けている。「私はかつてコルビュジエ、カーンに学び、今はインドに学んでいる」とドーシが話してくれたのは、カーサが2005年にインドでインタビューを行った時。その取材場所こそが今回紹介するスタジオ〈サンガト〉だった
「ドーシはスタジオのことを、建築を学ぶ人々にとっての“寺院”のような場所だと言っていました」。そう話してくれたのは、かつてドーシの元で学び、今は竹中工務店のインド現地法人に在籍する飯田寿一さん。アーメダバードにあるスタジオは13時から13時半までがオープンタイムで事前の約束がなくても見学ができるという。「ドーシはとても心の広い方。中でも印象的だったのは、85歳で大切なことを見つけた、それは寛容さと自分が持っているものを分け与えることだ、という言葉です」。若い頃から教育者としても活動してきたドーシだが、本人曰く、学内に自室を持ったことはないそう。学生にとっても話しやすい存在だったに違いない。スタジオ名の〈サンガト〉は「共に歩む」の意だが、そこにも彼の仕事や人生への姿勢が表れている。
「ドーシは家族を大切にしていて、事務所にはよく曾孫が遊びに来ていました」と飯田さん。強い家族愛は確かにコルビュジエやカーンにはあまり感じられないもの。ドーシの慈愛に満ちた精神を知っておくことは、その建築を理解する手助けにもなるはずだ。
「ドーシは家族を大切にしていて、事務所にはよく曾孫が遊びに来ていました」と飯田さん。強い家族愛は確かにコルビュジエやカーンにはあまり感じられないもの。ドーシの慈愛に満ちた精神を知っておくことは、その建築を理解する手助けにもなるはずだ。
Balkrishna Doshi
バルクリシュナ・ドーシ 1927年インド・プネー生まれ。ル・コルビュジエのチャンディガールやアーメダバードのプロジェクトに携わる。56年、事務所ヴァスツ・シルパ設立。教育者としてもインド社会に貢献。