【速報】オリンピックスタジアムを臨む、藤森照信の茶室。「パビリオン・トウキョウ2021」メイキングレポート。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

【速報】オリンピックスタジアムを臨む、藤森照信の茶室。「パビリオン・トウキョウ2021」メイキングレポート。

オリンピックスタジアムとなる〈国立競技場〉を中心とする都心の10か所に、9人の建築家とアーティストが建物やオブジェを設置し、自由で新しい都市のランドスケープを提案する『Tokyo Tokyo FESTIVAL スペシャル13「パビリオン・トウキョウ2021」』が7月1日にスタートした。そのひとつ《茶室「五庵」》の施工中に、設計者の藤森照信へ行ったインタビューの模様をお届けする。

建設中の茶室からオリンピックスタジアムを眺める藤森。銅葺きの屋根の上には擬宝珠のような芝を乗せ上棟。 photo_Kenya Abe
完成した《茶室「五庵」》北面を見上げる。
工事中の様子。基壇部には大林環境技術研究所で芝を張ったパネルが設置された。 photo_Kenya Abe
東京・神宮前の〈国立競技場〉前、仙寿院交差点の南西角に、突如出現した異形の建物。緑色の台形に黒い壁の部屋が乗り、屋根はオレンジ色に輝いている。これが、〈高過庵〉や〈低過庵〉など超個性的な茶室を設計してきた建築史家・藤森照信の最新作《茶室「五庵」》だ。隈研吾設計のオリンピックスタジアムと対峙するような立地に、この茶室を設計した意図とは?

「最初に希望した場所は外苑西通りをはさんだ南東の角だったのですが、東京オリンピック・パラリンピックの施設ができるというので、現在のビクタースタジオ前になりました。この茶室の特徴は安定した造形で、時代の記念碑として古典的な表現にしました。ローマ建築の流れを汲むオリンピックスタジアムとは対照的な、日本の木造2層建築で、基壇には滋賀の大林環境技術研究所が開発した工法で芝を張ります。関西の競馬場で採用されている強い芝で、東京オリンピック・パラリンピック会期中は緑が保てる。実は去年、新型コロナウイルスの影響で『パビリオン・トウキョウ2020』の中止が決定する前には準備ができていたので、1年分の栄養で育っているんです」
完成した《茶室「五庵」》の北面全景。
《茶室「五庵」》の中にて。四畳半空間を占める立礼式のテーブルは、四方をベンチに囲まれている。 photo_Kenya Abe
茶室外壁は焼杉を使用。窓がくりぬかれた部分は雨戸、ガラス戸、障子を納める戸袋。 photo_Kenya Abe

基壇部に設けられた待合の入口は卵形で、引き戸が閉まる構造。
完成した茶室は基壇部内の待合から梯子を登って上がる設計だが、取材当日は周囲の足場階段ステップから出入りした。

「この茶室は立礼(りゅうれい)式なので、四畳半の床が見えなくなる大きさのテーブルを設計しました。ヨーロッパでも椅子は作品として後世に残るけど、テーブルは無視される。ル・コルビュジエやウェグナーが作ったテーブル、聞いたことがないですから、いつかちゃんと設計してみたかったんです。このテーブルは“火と水”がテーマで、これから設置される炉があって水盤がある。水盤は漆喰でつくった中に、トクサと芝でつくった小さな山がある。そういうテーブルは例がないので、私は気に入っています。天井は炭を小さな岩のように砕いて外壁の焼杉と対比させ、照明は和紙を五輪の色で染めました。障子を閉めると夜は行灯のように光ります」
「あの〈国立競技場〉の通路から、この茶室を早く見てみたい」とオリンピックスタジアムを臨む藤森。 photo_Kenya Abe
完成した《茶室「五庵」》をオリンピックスタジアム側の地上から見る。
オリンピックスタジアムの斜向かいに建設中の《茶室「五庵」》。  photo_Kenya Abe
そして何より圧巻なのが、茶室から望む巨大なオリンピックスタジアムの眺望だ

「いやぁ、いいよ! 自分で言うことじゃないけど(笑)。枠の中から見た良さっていうか、巨大なものを小さな穴の中から見るということなんですよ。枠の中から覗いた感があります。目線の高さはせいぜい4mだけど、やっぱり地上からとは違って見えます。何か別の世界から現世を覗いているような(笑)。競技場の観客が通るあそこの通路からどう見えるかも、早く見てみたいね」

《茶室「五庵」》の構想は3年前から始まり、初期のドローイングは「パビリオン・トウキョウ2021」のメインイメージにも使用されている。
藤森照信《茶室「五庵」》のためのドローイング。地上には名建築、雲の上には歴史的イメージが……。
完成した《茶室「五庵」》からオリンピックスタジアムはこんなふうに見える。
完成した《茶室「五庵」》の障子を閉じた状態。
茶室西側には水屋の引き戸も設けられているが、外は宙空で何もない。
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茶室「五庵」:「パビリオン・トウキョウ2021」

東京都渋谷区神宮前2-21-1 ビクタースタジオ前。〜2021年9月5日。11時〜19時(土曜12時〜)。無休。無料。内部への入場には近くの〈ワタリウム美術館〉で当日予約が必要。予約の詳細は https://paviliontokyo.jp/news/reservation から。

藤森照信

ふじもり てるのぶ 1946年生まれ。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。現在、江戸東京博物館館長、東京大学名誉教授、工学院大学特任教授。近代建築史・都市史研究を経て1991年、45歳のときに〈神長官守矢史料館〉で建築家としてデビュー。土地固有の自然素材を多用し、自然と人工物が一体となった姿の建物を多く手掛けている。建築の工事には、素人で構成される「縄文建築団」が参加することも。代表作に〈タンポポハウス〉〈ニラハウス〉〈高過庵〉など。近作に〈多治見市モザイクタイルミュージアム〉や〈ラ コリーナ近江八幡〉の〈草屋根〉〈銅屋根〉などがある。
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