ローテクの「コンテナ住宅」が今なぜ注目されるのか|吉田実香のNY通信 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS
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NY州北部ハドソンに完成した《c-ホーム・ハドソン》。40フィートのコンテナ6個を組み合わせた。
〈LOT-EK〉といえば、コンテナ建築。〈LOT-EK〉が輸送コンテナで建築を作り始めた1990年代初頭、その斬新な発想と美意識は見る者に衝撃を与えた。アップサイクル、リ・パーパスという言葉が広く普及するのは、その何十年も後のことだ。工業用資材を再利用した住宅や商業施設は今でこそ世界各地で見られるが、思わぬものから美を生み出すことにかけて〈LOT-EK〉はその元祖と呼べるだろう。

近年は美術館でのインスタレーションや、商業施設のデザインなど大規模プロジェクトで知られる彼らだが、その原点のコンテナハウスはプレハブ住宅として一般向け販売も行っている。その名を《c-ホーム》。プレハブとはプレファブリケーション、つまり必要なパーツが全てあらかじめ用意され、施主は現場で組立てるだけといういわばキットである。輸送コンテナは20フィートx 8フィート(面積14.2平方メートル)と、40フィートx 8フィート(29.7平方メートル)。この2種類をモジュールとして組み合わせ、郊外・都市部を問わず住まいや別荘を作ることができるのだ。
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《c-ホーム・ハドソン》は斜めの窓が特徴だ。
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床は合板でできたコンテナの床を生かす。
都市から郊外や地方へ移住する人々や企業が後を絶たない、このご時世。ニューヨーク大学スターン・ビジネススクールの統計によれば、マンハッタンでは昨年の春から夏にかけて人口の15~20%が流出したという。また郊外に家を構える人の間でも、自宅の敷地内に仕事場を作りたい、部屋を増やしたいというニーズは高まるばかり。アメリカはそもそも、キャンピングカーや農業用サイロなどを改装しては個性的な居住空間として楽しむお国柄だ。「2日で建つ」と言われるコンテナ住宅は憧れの一つなのである。

しかし、なぜ《c-ホーム》? コンテナ住宅といえば耐久性やコスト面、サステナビリティで優れていると思われがちだが、必ずしもそうとは限らない。購入者は中古コンテナよりも新品を求めがちなので、その場合サステイナブルではない。箱ではなく建築物の扱いになるため建築基準法に準じる必要もある。そのままでは自然光が入らない。そうした問題を〈LOT-EK〉は長年の経験と知識でクリアする。

建築用コンテナではなく、中古の輸送コンテナをあえて利用するのが彼らの流儀だ。家づくりはまずコンテナ選びから始まる。傷み具合はどうか、有害な薬品を運んだ形跡がないか確認する。とりわけ念入りにチェックするのが床のアピトン合板だ。というのも〈LOT-EK〉はコンテナの床をほぼそのまま生かす。表面は軽く研磨して、汚れや傷みを取り除き、なめらかにした後、マットフィニッシュを塗る。子どもを裸足で走り回らせても大丈夫で掃除もしやすく、見た目もエレガントな床の完成だ。
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