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ARCHITECTURE

【石川・加賀】風情漂う温泉地・加賀温泉郷にとけこむ建築。|甲斐みのりの建築半日散歩

| Architecture, Culture, Food, Travel | casabrutus.com | photo_Ryumon Kagioka   text_Minori Kai   cooperation_一般社団法人 加賀市観光交流機構

石川県加賀市にある山代・片山津・山中の3温泉地が点在する加賀温泉郷。金沢から電車で30分という立地ゆえ、加賀百万石の伝統に育まれ、日本三名山の一つ・白山を望む自然豊かな土地は、北大路魯山人など数々の文人墨客を魅了した。今回の旅では、山代温泉と片山津温泉を中心に、加賀市で建築的視点で楽しめる、温泉宿、店、名所を巡った。※本取材は2020年12月に行われたものです。また、営業時間などは情勢により変更する場合があります。

●建築家・内藤廣が手がけた、「総湯」を中心とした街づくり。

1886年(明治19)に建て替えられた総湯を古総湯として再現。ライトアップされ、夜の湯の曲輪の街並みに美しく浮かびあがる。
1886年(明治19)に建て替えられた総湯を古総湯として再現。ライトアップされ、夜の湯の曲輪の街並みに美しく浮かびあがる。
約1300年の歴史ある温泉街・山代温泉では江戸時代から、「総湯」と呼ばれる共同浴場を旅館や商店がぐるりと囲む「湯の曲輪(ゆのがわ)」という街並みが形成されてきた。そんな昔ながらの風景を改めて整備するプロジェクトが2010年(平成22)に実現している。

そのきっかけを作ったのが、長きに渡り街づくりに携わっていた建築家・内藤廣。老朽化していた鉄筋コンクリート造りの総湯が建つ場所に、明治時代の趣ある総湯を「古総湯」として復元し、街の人に親しまれていた総湯は自らの設計で古総湯のすぐ目の前に新設。観光のシンボルと地元住民の憩いの場が向かい合う形で、情緒がにじむ温泉街の景色を蘇らせた。
湯船には色鮮やかなステンドグラスが光を映し特別な情緒を漂わせる。
湯船には色鮮やかなステンドグラスが光を映し特別な情緒を漂わせる。
下屋にはこけら葺を使用。赤身の杉板を重ね竹釘で留めている。
下屋にはこけら葺を使用。赤身の杉板を重ね竹釘で留めている。
湯船には色鮮やかなステンドグラスが光を映し特別な情緒を漂わせる。
下屋にはこけら葺を使用。赤身の杉板を重ね竹釘で留めている。
2階の休憩室や浴室に「九谷五彩」と称される5色のステンドグラスを配した、木造2階建、寄棟造瓦葺の古総湯は、柱に檜と杉、梁に地松、板材は檜と能登ヒバと、基礎以外は全て木材で作られている。2階の屋根瓦は北陸地方特有の釉薬瓦の古瓦を再利用し、浴室の床や腰壁には九谷焼のタイル、同じく浴室の板壁は北陸地方の民家で見られる拭漆仕上げと、地元の素材や技術をふんだんに使用。

入浴方法は明治時代の総湯と同じ「湯あみ」方式で、カランやシャワーなどの設備がなく、温泉に浸かるひとときをまっすぐに楽しめる。湯の温度は熱めで長湯が難しい分、湯上りには2階の休憩場で涼みながらひと休み。長い時間湯船に体を沈めたり、しっかり体を洗いたいときは、向かいにある〈内藤廣建築設計事務所〉が手がけた総湯を利用するといい。
床のタイルは約2千枚もの九谷焼のタイルを使用。当時の絵柄を手描きで忠実に再現した腰壁の染付タイルも約1千枚使われている。
床のタイルは約2千枚もの九谷焼のタイルを使用。当時の絵柄を手描きで忠実に再現した腰壁の染付タイルも約1千枚使われている。
浴場脇から階段で繋がる2階の休憩所。明治時代にステンドグラスはモダンの象徴で、最先端の技術だったという。
浴場脇から階段で繋がる2階の休憩所。明治時代にステンドグラスはモダンの象徴で、最先端の技術だったという。
床のタイルは約2千枚もの九谷焼のタイルを使用。当時の絵柄を手描きで忠実に再現した腰壁の染付タイルも約1千枚使われている。
浴場脇から階段で繋がる2階の休憩所。明治時代にステンドグラスはモダンの象徴で、最先端の技術だったという。

〈山代温泉 古総湯〉

●加賀市山代温泉18-128 TEL0761 76 0144。6時〜22時閉館。各月の第4水曜6:00〜12:00休(正午から通常営業)。入湯料500円。

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甲斐みのりの建築半日散歩illustration Yoshifumi Takeda

甲斐みのり

かい みのり  文筆家。旅、散歩、甘いもの、建築など幅広い題材について執筆。その土地ならではの魅力を再発見するのが得意。

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