長坂常が銭湯をリノベ! 銭湯絵はほしよりこ作品です! | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

長坂常が銭湯をリノベ! 銭湯絵はほしよりこ作品です!

『カーサ ブルータス』2020年10月号より

東京の下町で裸のお付き合い。創業88年を迎えた錦糸町の老舗銭湯〈黄金湯〉を、お風呂大好き建築家、長坂常がリノベーション!

長坂がリノベした銭湯〈黄金湯〉で。タイルは肌に優しいベージュで統一。女湯との境界壁を越えて描かれた銭湯絵はほしよりこ画。モルタルと墨による現代の絵巻物だ。
浴場一面に描かれた、ほしよりこ圧巻の書き下ろし絵巻物。
富士山を挟んで女湯サイド。この絵巻物から恋愛&家族ドラマを妄想するもよし、自らの人生に重ねて見るもよし。「壁の向こう」が気になる人は、男湯女湯が入れ替わる水曜に。
こちらは、富士山を挟んだ男湯サイド。
銭湯の醍醐味は、壁の向こうに想いを馳せること。越えてはならぬ境界を眺め、響く声と見えない姿に心を寄せる。

「そのソワソワがいいんですよ」と、うれしそうに話す〈スキーマ建築計画〉の長坂常。日頃から銭湯好きを公言している長坂が、初めての銭湯リノベーションに着手した。舞台は〈黄金湯〉。今年で創業88年になる東京下町の銭湯だ。

「銭湯って、若い世代には少しハードルが高い場所。と同時に、銭湯の文化と我々がいるデザインの世界にも、いまだ壁がある。その距離をどう縮めるかを考えました」
サウナと水風呂が新設された男湯。
洗い場と脱衣室を隔てる大暖簾の柄は、「お〜い」の文字がモチーフ。
老朽化した配管・設備・躯体にはがっつり手を入れ、サウナや水風呂を新設。目や肌に触れる部分は優しいデザインを心がけた。温かみのある木を使うほか、タイルなどはベージュで統一。銭湯には珍しい色使いだが清潔感も柔らかさもあって評判は上々だ。

そして、壁である。男湯と女湯を隔てる高さ2250mmの壁をどう遊ぼうか。境界壁より上の部分、つまり男湯と女湯をつなぐ横長の壁に絵がほしいと長坂は考えた。お願いするならほしよりこ!

2018年の本誌20周年記念企画で「猫村さんの茶室」を設計した時からの付き合いだ。実はほしも大の銭湯好き。さっそく現場を見学し、「こういう横長スペースなら、絵巻物が面白いかも」と快諾。男湯の端から女湯の端まで約11mの壁面を生かすべく、時間の流れを感じさせる絵巻物を考えた。
意外な場所に、ほしが描いた隠し絵も多数。
「お手本にしたのは葛飾北斎。〈すみだ北斎美術館〉に通い、北斎漫画も研究しました。江戸時代に銭湯通いをしていた普通の人たちも描きたくて、資料もたくさん取り寄せた。当時の女性や子どもはどんな格好だったのか、結婚式は? お産は? と」(ほし)

長坂の事務所で試作を繰り返した後、本番は洗い場に足場を組み、無塗装のモルタルに筆と墨で描くこと2日間。市井の人々(と猫と犬)のドラマをつづった絵巻物には、ここが現代なのか江戸なのか、はたまた絵の中なのかと思わせる、不思議な引力がある。ハダカになって見るならなおさらだろう。

「湯に浸かって絵を眺めていると、物語の続きがどうなってるのか、壁の向こうが気になってくる。僕らの意図を汲みつつ想像を超えたものにしてくれた。さすがです」と、長坂も感心しきりだ。
風呂上がりはDJブースを兼ねた「番台バー」でクラフトビールを。頭上は行灯をイメージした照明。
湯上がりには、いい絵といい湯を反芻しながら番台バーで牛乳やクラフトビールをひっかけたい。

「デザインと伝統の壁、世代の壁、男女の壁。いろんな壁を越える場に育ってほしい。銭湯はやっぱり壁の向こうに夢があるんですよね」
錦糸町の新名所。夜は番台バーの照明が灯り行き交う人々を惹きつける。
ながさかじょう
建築家。スキーマ建築計画主宰。〈BLUE BOTTLE COFFEE〉〈T-HOUSE New Balance〉などリノベーション多数。温泉や銭湯を巡る「じょう散歩」を本誌で披露するほどの風呂好き。http://schemata.jp

〈黄金湯〉

東京都墨田区太平4-14-6 TEL 03 3622 5009。10時(土15時)〜翌0時30分。第2・第4月曜休。470円。熱湯、中温湯、低温炭酸泉の3種とサウナ。オートロウリュ・水風呂・外気浴は男湯(水曜は女湯)で利用可。

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