原宿駅前の風景を一変させた“道”の建築。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

原宿駅前の風景を一変させた“道”の建築。

『カーサ ブルータス』2020年7・8月合併号より

商業ビルの新しい可能性を感じる〈WITH HARAJUKU〉。設計を手がけた伊東豊雄に話を聞きました。

正面エントランス。吹き抜け空間を木の柱や梁が囲み木立の中のよう。
ぜひ一度上がってみてほしいのがこの3階の原宿駅側のテラス! 明治神宮の深い緑が見渡せ、心地いい風が吹く。
さまざまなショップやレストランの入った複合商業ビルは、もはや日本各地の主要駅前に必須の建物。大半は背の高い、飾り気のないビルで、駅のホームから直結でアクセスできる場所も少なくない。

「下手をすると、目的の駅へ行って、一度も地面を踏まずに用事を済ませて帰ることすらあるでしょう。人々がだんだん地上を歩かなくなる。街にとって、人にとって果たしてそれでいいのだろうか? という思いはありました」

そう話すのは伊東豊雄。竹中工務店と共同で設計を手がけ、6月にオープンしたばかりの〈WITH HARAJUKU〉は、そんな“駅前ビル”の定石を覆す建築だ。
フロア同士、ショップ同士をさまざまな “道” がつなぐ〈WITH HARAJUKU〉。2階から3階に至る階段は幅も広く、周囲の植え込みの緑を見ながら座ってのんびりできる。
「ここでは、人々と地面の距離を積極的に近づけたいと考えました。地上からアクセスし、“パサージュ(アーケード商店街)” を通じて店から店へ、あるいはテラスへと移っていく。路地を歩くような楽しみのある場にしたかった」

敷地はJR原宿駅の、文字通りに目の前。駅を出て横断歩道を渡り、巨大な木のゲートをくぐって “パサージュ” の中へ入ると、上下階へ延びるエスカレーター、1階の奥につながっていくゆったりとした通路。吹き抜けを通じて違うフロアの様子が見えたり、道の折れ曲がりの向こうにショップが見え隠れしたり……。ショップが入るフロアはサイズも高さも異なる5層に分かれているから、各フロアの様子もすべて違う。上へ、下へ、右へ、左へ。一歩進むごとに景色がどんどん変わって、探検するように歩き回ってみたくなる。

「元々この敷地辺りには “源氏山” という山があり、周囲でいちばん高い山でした。現在でも、敷地は竹下通り側に向かって傾斜しています。その地形の変化を、訪れた人々も体験できるかたちで取り戻したいと思いました」
竹下通り側のエントランスからの眺め。不定形で傾斜のある敷地にたつ建物やフロアの間を “道” がつないでいる。
地下1階。吹き抜けを通じて違う階の “道” も見える。
ショップの間を縫い、取り囲むように展開する “パサージュ” = “道” は、幅が広くなってテラスになったり、ベンチのようにも使える大階段になっていたりと、場所によってさまざまに変化する。上り下りすること自体が楽しめる、まさに小高い丘のような場所でもあるのだ。駅側のエントランスから、エスカレーターや階段でこの “道” を下っていくと竹下通り側に出るが、スロープの中ほどにあるこちらの入口から見た〈WITH HARAJUKU〉の眺めにも注目してほしい。“道” の周縁部に植えられたさまざまな植物に覆われて、本当に小さな山のようなのだ。

「さらに時間が経ち、緑が成長すると、本当に丘みたいになって傾斜の下からは建築が見えなくなるかも……(笑)。原宿という商業エリアに、自然に似た風景が持ち込めたらいいなと思うんです」

多くの人気ショップが入る駅前の注目スポットなのに、自然の中にいるような場所。伊東が見せたのは、新しい商業ビルのかたちだ。

いとうとよお

建築家。1941年生まれ。最近の作品に〈台中国家歌劇院〉〈川口市めぐりの森〉〈信毎メディアガーデン〉など。〈水戸市市民会館〉などの新プロジェクトも着々と進行中。http://www.toyo-ito.co.jp/

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