【対談】皆川 明と中村好文が実現させた“小屋”の夢。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

【対談】皆川 明と中村好文が実現させた“小屋”の夢。

〈東京都現代美術館〉で開催中の『ミナ ペルホネン/皆川明 つづく』展。その関連イベントとして昨年12月、Casa BRUTUSの無料読者会員サービス「カーサ iD」の会員を対象に、皆川明と建築家・中村好文による、スペシャルセッションが行われました。2人のコラボレーションによって生まれた小屋=《shell house》誕生の過程をはじめ、クリエイターとしての2人の共通点、そして皆川が「中村の事務所の所員になりたかった」という発言も飛び出したトークの一部をお届けします。

奥の螺旋状の小屋が、展示室「種」に組み上げられた《shell house》。この小屋を森の中に点在させた宿泊施設「森の浜」をいつか実現させたいと皆川は語る。
ミナのテキスタイルが壁一面に並ぶ、『ミナ ペルホネン/皆川明 つづく』展の入り口。
奥の螺旋状の小屋が、展示室「種」に組み上げられた《shell house》。この小屋を森の中に点在させた宿泊施設「森の浜」をいつか実現させたいと皆川は語る。
ミナのテキスタイルが壁一面に並ぶ、『ミナ ペルホネン/皆川明 つづく』展の入り口。
・“変なかたち”の小屋の夢。

皆川 明(以下、皆川) 「簡素で心地よい宿を運営すること」が将来の夢だと、2015年に文章として書きました。今回の展覧会で、それを一度、かたちとして具現化したい。そう思ったのが、この《shell house》が生まれたきっかけです。中村さんとは京都に〈京の温所〉という宿を作らせていただいたり、〈ミナ ペルホネン〉の保養所のリノベーションをお願いしたり、毎年一緒に旅をしていたり。そうやって親しくさせてもらっているということは、きっと、かたちにできるということではないか。そんな風に思って、中村さんにお話したんです。

中村好文(以下、中村) 皆川さんから「小屋」って言われたのでぼくはなんとなく家型のものをイメージしていたんです。でも、最初の打ち合わせの際に、皆川さんがやにわにA4の紙にぐるぐるって渦巻きを描いたんですね。まさにこの小屋のもととなる渦巻き模様です。そのスピードと勢いっていうのか、力強さに感動したんです。これは絶対、かたちにしなきゃいけないと思った。ただ、変なかたちだから(笑)。やりますとは言ったものの、帰ってからスタッフと話していて、「本当にできるのかな?」とは思いました。けど、せっかく声をかけてもらったんだから腕の見せどころじゃないか、とも思いました。

皆川 「変な…」というのは、この建物には“柱”がないんですよね。

中村 そう。柱はなく合板だけで成立させているんです。合板というのは通常、縦横の木目でできているんですが、一方向だけの木目でできている合板がある。それは曲面用なので、おそらくこの小屋に使えるだろうなと。厚さは12mm。ここでは2枚を貼り合わせたので、壁の厚さはわずか24mmなんです。この厚さでもなんとか成立させるために作り方を考えるんですが、ぼくひとりで考えたわけではなく、大阪の工務店の大工さんたちと一緒に開発しました。でも、これ以上詳しくは話せません。企業秘密なのでね(笑)。

皆川 でも、会場には組み上げていくまでの映像がありますので、ぜひ秘密を見てみてください(笑)。今日は特別に小屋の2階にも上がっていただきますが、「螺旋状のこういう構造でもなんとかなるのか」という感覚は、実際に上がって体感してみないと、わかりづらいところがあるかも知れません。実は、ぼくにとってこの構造は、「外側が内側になっていく」という、もうひとつの意味があるんですね。つまり、外壁を螺旋にしたがって辿っていくと、ある部分からそれが内壁になっているんです。これは展示室「土」(〈ミナ ペルホネン〉の過去の服を、それを着ていた持ち主のエピソードとともに並べている部屋)で表現したかった、「自分の身体の外側にある服が、いつしか記憶になる=持ち主の内面になる」ということと、同期しています。シェルハウスは、この展覧会を体現する大事な造形物でもあるんです。

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