建築、アート、本。イソップは感性を提示する。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

建築、アート、本。イソップは感性を提示する。

常に気鋭の建築家を起用し、その地に根ざした無二のデザインの店舗を構えることでも知られる、オーストラリア発のスキンケアブランド〈イソップ〉。2019年にはシドニーに世界最大規模の店舗が誕生したほか、初のアートブックを出版、またシンガポールではインスタレーション『Epistēmē』を展示。ブランドの追求するクオリティを、多角的に表現している。

世界的デザイン事務所〈スノヘッタ〉による、〈イソップ シドニー店〉。荘厳な花崗岩で包み込まれるような内装。
メルボルンのヘアサロンをブランドの出発点とする、スキンケアブランド〈イソップ〉。その創業者のひとりデニス・パフィティスが、かつてお客に渡す“おつり”にまで上質な香りを纏わせていたという話は、〈イソップ〉の33年の歩みを見渡してみると、笑い話ではないのだとわかる。肌の状態がひとりひとり異なるお客に対して最適なアイテムを提供するために行う、スタッフによる緻密なコミュニケーション。その土地の文脈を丁寧に拾い上げ、ひとつとして同じではないデザインを作り上げる店舗設計。抑制された装飾、音楽、照明。ストイックにトーンが統一されたプロダクトデザイン。

それら〈イソップ〉ならではのコードはすべて、肌が“身体の一部”であると同時に、人と外界とが接する“境界”であり、すなわち情報や感性をキャッチするための“感覚器”でもあるのだという視点に基づいている。
だからこそ、〈イソップ〉はプロダクトのクオリティを追求するのと並行して、様々なアーティストとの協働や、アートプロジェクトの後援を、絶えず行ってきた。音楽家のジェシー・パリス・スミスを起用した、香りからインスパイアされたサウンドトラックをダウンロードできるルームフレグランスコレクション。〈メトロポリタン美術館〉における、建築シンポジウムの後援。文芸誌「パリス・レビュー」とのパートナーシップ……。

2019年9月にシンガポール〈アイオン・ギャラリー〉で展示された『エピステミー(Epistēmē)』もまた、それら〈イソップ〉が取り組みつづけるアートプロジェクトの系譜に、新たな1ページを刻むものだ。コラボレーションしたのは、オランダ人のアーティストであるバート・ヘス。タイトルが意味するのは、古代ギリシャ語で「知識と理解」だ。〈イソップ〉の3つのスキンケアアイテムが肌に触れた瞬間の香り、テクスチャー、効果、さらには五感を超えて得られる印象をそれぞれ、抽象的な映像で表現。3種類の立体作品が、張り巡らされ、敷かれ、並べられた会場内を進みながら、それらの映像を鑑賞する、といった会場構成だ。
『エピステミー(Epistēmē)』会場風景。
『エピステミー(Epistēmē)』会場風景。
肌を取り巻く環境とは、「湿度」や「紫外線」といった、フィジカルな要素に留まらない。日々営んでいる生活のリズムや、職場や人間関係におけるストレスの寡多……。〈イソップ〉はそれら総合的なライフスタイルにまで光をあて、「いかに生きていたいか?」「そのためにはどんな風に暮らすべきか?」と、ひっそりと問いかける。

〈イソップ〉は2020年、創業33年を迎える。“3”は、陳列のルールや、文字組みのひとつの単位として扱われているなど、ブランドにとって特別な数字だ。創業以来の歴史やフィロソフィーを記したブランドブックが初めて出版されたのも、この33周年というブランドならではの記念イヤーに合わせてのこと。店舗デザイン、アートプロジェクトといった、スキンケアプロダクトにとどまらない〈イソップ〉独自の歩みに注目だ。