篠原一男の伝説的住宅 〈Tanikawa House〉を知っていますか? | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

篠原一男の伝説的住宅 〈Tanikawa House〉を知っていますか?

『カーサ ブルータス』2019年11月号より

谷川俊太郎の一編の詩から構成された、1974年完成の〈Tanikawa House〉。〈The Chain Museum〉の運営で、アートを支える新しい試みが始まりました。

緩やかな斜面に建つ住宅。この傾斜がそのまま室内の大きな土間に取り入れられている。
住宅を中心に多くの佳作を手がけ、今も後進に大きな影響を与える建築家・篠原一男。彼の代表作のひとつ〈Tanikawa House〉が、遠山正道が代表を務める〈The Chain Museum〉の運営に。建物の保全を行いながら、さまざまな芸術表現の場として活用していくという。プロジェクトに携わる長谷川豪に話を聞いた。

Q 長谷川さんにとって〈Tanikawa House〉とは?

世界的に有名な空間であり、個人的にも篠原作品のなかでいちばん好きな住宅です。今回、遠山さんからこの住宅の活用の仕方についてご相談をいただき、改めて訪問しました。築40年以上が経って外装に傷みはあるものの、内部は竣工当時の写真から全く変わっていないことに驚かされました。

Q この住宅の魅力は何でしょう。

緩勾配の地形をそのまま取り込み床が斜めになった土間は、高さも広さもある空間。一方、その隣にある2階建て部分は一般的な部屋よりひと回り小さく、大橋晃朗さんがデザインした家具も小ぶりです。巨人の家と小人の家がくっついたかのようで、一般的に居心地がよいとされる寸法からはかけ離れています。だから、ここに身を置くと初めは少し戸惑うのですが、それは普段僕たちが都市の建物の標準的な寸法に飼い慣らされているからかもしれない。そんな気づきを与えてくれます。

Q この住宅は今後、〈The Chain Museum〉が保全・運営していく。建物の価値を伝え、守ることをどのように考えていますか。

欧米では近代以降の建築が文化財として守られ、見学ツアーも充実しています。日本もこれから名建築の保存や活用の議論が増えると思いますが、時代に即した建築の新たな残し方、伝え方を考えていくべきなのでしょうね。
お披露目を記念して行われた、谷川俊太郎と谷川賢作による親子共演。 photo_Tamami Iimura

Tanikawa House 

篠原一男(1925〜2006)が詩人の谷川俊太郎の別荘として設計。〈The Chain Museum〉の運営となり、建物の保全を行うことを目的としてアプリ「ArtSticker」で、閲覧・支援が可能になった。

長谷川豪

はせがわごう 1977年埼玉県生まれ。建築家。東京工業大学大学院修了後、西沢大良建築設計事務所を経て、2005年独立。戸建てやアパートメントなど住宅の設計を数多く手がける。ハーバード大学デザイン大学院客員教授。