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美しい焼杉に包まれた大和棟の古民家。
『カーサ ブルータス』2019年8月号より
July 9, 2019 | Architecture, Design | PR | photo_Kiyoshi Nishioka text_Katsura Hiratsuka
クスノキの大木を背に佇む、築200年の古民家。宿場町をルーツとする、旧街道の景観になじんでいます。改修のポイントとなったのは、焼杉の塀でした。
葛城古道という歴史ある街道沿いに瓦屋根と木の塀で覆われた美しい古民家が建つ。ここは江戸時代中期から続く旧家で、築200年前後になる。さらに古いのが庭にあるクスノキとケヤキの巨木で、樹齢700〜800年に及ぶという。
改修のきっかけは、この大木の存在だった。生活拠点は先代が建てた裏手の家に置かれ、こちらの主屋は長らく空き家として放置され、雨漏りも起きていた。そしてついに、クスノキの大木の根が床を抜き、塀を崩してしまう。このままでは公道に危険が及びかねないと、手立てを講じる必要に迫られた。建物を取り壊すという方法もあり得たが、ご主人は長く続いてきた旧家の歴史を断つわけにはいかないと、改修を決断した。
改修で大事にしたのは、クスノキの大木と建物が干渉しないように距離を置くこと。そこで大木付近の増築部分を減築し、木を眺められる広い縁側と、焼杉の大和塀を新設した。
改修のきっかけは、この大木の存在だった。生活拠点は先代が建てた裏手の家に置かれ、こちらの主屋は長らく空き家として放置され、雨漏りも起きていた。そしてついに、クスノキの大木の根が床を抜き、塀を崩してしまう。このままでは公道に危険が及びかねないと、手立てを講じる必要に迫られた。建物を取り壊すという方法もあり得たが、ご主人は長く続いてきた旧家の歴史を断つわけにはいかないと、改修を決断した。
改修で大事にしたのは、クスノキの大木と建物が干渉しないように距離を置くこと。そこで大木付近の増築部分を減築し、木を眺められる広い縁側と、焼杉の大和塀を新設した。
塀に焼杉を用いた理由は景観との調和と、費用対効果を考えてのことだと設計者の貴志泰正は言う。
「元は漆喰塀でしたが、同じ材料でつくり直すのはコストの面で難しい。竹や金属といった材料と比較検討し、耐久性があり、かつ昔ながらの建物が連なる街並みともなじむので、焼杉を選びました」
奈良県の古民家特有の大和棟の造りや土間と座敷からなる構成、割竹を用いたすのこ天井、正面の格子といった希少な細部はしっかりと継承した。その上で内部を区切っていた建具や、圧迫感を与えていたたれ壁が取り払われ、伸びやかな空間に生まれ変わった。
躯体の新設や改修と内外装にはスギ、ヒノキを中心に、奈良県産材を積極的に使用した。元の建物や景観になじむという理由が大きいが、さらに森の環境を守る意義もあると貴志は語る。
「林業や製材業に関わる方から、高度経済成長期に植樹した木が使い切れないことや、その影響で森が荒れていることを伺っています。地域の木を建材として使うことには意義があると実感しています」
「元は漆喰塀でしたが、同じ材料でつくり直すのはコストの面で難しい。竹や金属といった材料と比較検討し、耐久性があり、かつ昔ながらの建物が連なる街並みともなじむので、焼杉を選びました」
奈良県の古民家特有の大和棟の造りや土間と座敷からなる構成、割竹を用いたすのこ天井、正面の格子といった希少な細部はしっかりと継承した。その上で内部を区切っていた建具や、圧迫感を与えていたたれ壁が取り払われ、伸びやかな空間に生まれ変わった。
躯体の新設や改修と内外装にはスギ、ヒノキを中心に、奈良県産材を積極的に使用した。元の建物や景観になじむという理由が大きいが、さらに森の環境を守る意義もあると貴志は語る。
「林業や製材業に関わる方から、高度経済成長期に植樹した木が使い切れないことや、その影響で森が荒れていることを伺っています。地域の木を建材として使うことには意義があると実感しています」