VEHICLE
Chill CARS|優雅さとおおらかさが同居する、英国の雄。
『カーサ ブルータス』2017年10月号より
September 17, 2017 | Vehicle | Chill CARS | photo_Futoshi Osako text_Fumio Ogawa illustration_Daijiro Ohara
初代《レンジローバー》の良さはそのおおらかさにある。自動車デザイナーは硬い鉛筆やボールペンでデザイン画を描くが、このクルマでは6Bをざくざくっと使ったように感じる。その印象はボディの「建て付け」から来るのだろう。
初代《レンジローバー》の良さはそのおおらかさにある。自動車デザイナーは硬い鉛筆やボールペンでデザイン画を描くが、このクルマでは6Bをざくざくっと使ったように感じる。その印象はボディの「建て付け」から来るのだろう。
ボンネットをはじめ、ルーフ、側面のパネル、あらゆるところの合わせ目がかなり大きい。生産開始時、英国では工場の問題で精度の高い組み立てができなかったと聞く。そこで設計者のスペン・キングは、各パネル間のギャップ(専門用語で「チリ」と言う)をあえて大きくとる方式を採用した。多少ズレても誤差を吸収できるからだ。今やそれが良い個性に。英国の歴代首相が乗った《ローバー・P5》などを手がけた名設計者キングは、草葉の陰で驚いているのではないだろうか。
米〈インターナショナル〉社が61年に発表した4WD《スカウト》の影響を受けて開発された《レンジローバー》。トルクの太いV8エンジンに、ストロークの長いサスペンションも悪路走破性に寄与。革内装で高級感も盛り込んだことで、唯一無二のキャラクターとなった。
昨今では空力的(燃費効率的)にもチリをできる限り小さくする傾向にある。ドイツ車などは0・3mm程度だ。しかし、緻密さは息苦しさにもつながる。初代レンジローバーは場所によっては10mm超。今、このクルマが人気なのは、深呼吸のような気持ち良さがあるからかもしれない。
ボンネットをはじめ、ルーフ、側面のパネル、あらゆるところの合わせ目がかなり大きい。生産開始時、英国では工場の問題で精度の高い組み立てができなかったと聞く。そこで設計者のスペン・キングは、各パネル間のギャップ(専門用語で「チリ」と言う)をあえて大きくとる方式を採用した。多少ズレても誤差を吸収できるからだ。今やそれが良い個性に。英国の歴代首相が乗った《ローバー・P5》などを手がけた名設計者キングは、草葉の陰で驚いているのではないだろうか。
米〈インターナショナル〉社が61年に発表した4WD《スカウト》の影響を受けて開発された《レンジローバー》。トルクの太いV8エンジンに、ストロークの長いサスペンションも悪路走破性に寄与。革内装で高級感も盛り込んだことで、唯一無二のキャラクターとなった。
昨今では空力的(燃費効率的)にもチリをできる限り小さくする傾向にある。ドイツ車などは0・3mm程度だ。しかし、緻密さは息苦しさにもつながる。初代レンジローバーは場所によっては10mm超。今、このクルマが人気なのは、深呼吸のような気持ち良さがあるからかもしれない。