VEHICLE
Chill CARS|ふつうを目指した結果、ユニークさが滲み出たセダン。
『カーサ ブルータス』2021年6月号より
May 15, 2021 | Vehicle, Design | Chill CARS | photo_Futoshi Osako text_Izuru Endo illustration_Daijiro Ohara
「平凡」という言葉を辞書で引くと、これと言う優れた点もなく、あたりまえで並なこと、とある。だが、フランスの〈ルノー〉が1969年に発売したセダン《12》は、あえてそれを狙って開発されていた。
現在に至るまで、フランス車は、合理主義を突き詰めたスタイルを目指した結果、それがエキセントリックな意匠となって表れることが多い。60年代まで遡ると、その傾向はさらに強かった。最右翼は〈シトロエン〉だが、欧州屈指のメーカー〈ルノー〉も、当時国営企業だったにもかかわらず、クセの強い車種を多く生み出していた。
そのため、世界中で販売する使命を受けた《12》は、フランス車らしさを極力消去。最も無難でありふれた4ドアセダンで登場。シンプルな設計により、開発途上国での生産も可能としていた。
しかし実際には《12》のデザインは奇妙だ。ルーフが後ろ上がりなのに、全体的な線は後部に下がっている。泣きだしそうなフェイスも表情豊かで、フランス車らしさが滲み出ている。それが、現代の路上では愛くるしく感じられる。
目論見通り、《12》は西欧のみならず、世界各国でよく売れた。東欧や南米では現地生産も行われた。だが成功した理由は、ただ平凡だったからではない。乗り心地が良く、車内も広く、実用車として非凡な性格を持っていたゆえだ。そのため《12》に合う本当の言葉は、過不足がなく調和がとれ、穏当であることを意味する「中庸」がふさわしいのではないかと思う。
そのため、世界中で販売する使命を受けた《12》は、フランス車らしさを極力消去。最も無難でありふれた4ドアセダンで登場。シンプルな設計により、開発途上国での生産も可能としていた。
しかし実際には《12》のデザインは奇妙だ。ルーフが後ろ上がりなのに、全体的な線は後部に下がっている。泣きだしそうなフェイスも表情豊かで、フランス車らしさが滲み出ている。それが、現代の路上では愛くるしく感じられる。
目論見通り、《12》は西欧のみならず、世界各国でよく売れた。東欧や南米では現地生産も行われた。だが成功した理由は、ただ平凡だったからではない。乗り心地が良く、車内も広く、実用車として非凡な性格を持っていたゆえだ。そのため《12》に合う本当の言葉は、過不足がなく調和がとれ、穏当であることを意味する「中庸」がふさわしいのではないかと思う。
country: France
year: 1969-80
seats: 5
size: L4,340×W1,635×H1,310mm
price: approx 2,000,000 yen
special thanks to Masayuki Shimoyama
※データと価格は、撮影車両を参考に算出したものです。
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