VEHICLE
Chill CARS|メーカーの思想を具現化した、空飛ぶ絨毯のようなクルマ。
『カーサ ブルータス』2020年10月号より
September 15, 2020 | Vehicle, Design | Chill CARS | photo_Futoshi Osako text_Izuru Endo illustration_Daijiro Ohara
1970年代の高級車は、箱型のセダンで、メッキを多用し、フロントに立派なグリルを持つのが一般的だった。一方、フランスの〈シトロエン〉が1974年に発表した旗艦モデルの《CX》は、そうした感覚が通用しなかった。
メッキグリルのない低いフロントと、猫背のルーフが織りなす流麗なスタイルは、立派に見せるよりは燃費・高速性能の向上を目指しており、空気抵抗係数を意味する車名にもその姿勢は表れていた。内装もユニークで、速度計・タコメーターは回転する円筒を読み取る方式。メーター脇のライト・ワイパースイッチは、レクチャーなしでの操作が難しかった。
このように、日本人から見ると高級車らしくなく個性的な《CX》だが、突飛に見えるライトやワイパーの操作は、実際に操作してみると手の移動範囲も少なく、合理性と機能性に富む。メーターも、一瞬で情報を読み取らせようというアイデアの賜物だ。「空飛ぶ絨毯」と形容される乗り心地の良さと、沈み込んだあとに身体を包む柔らかいシートも快適で、長距離移動での疲労も最小限だった。
《CX》が個性的になったのは、「安楽で快適な移動の実現」を求めていた〈シトロエン〉の思想を具現化した結果だった。これほどにメーカーの思想を反映させることは、クルマの画一化が進む現代では、もう見られないだろう。《CX》が今魅力的に映る理由は、まさにその「シトロエンらしさ=思想の具現化」にあるのだ。
このように、日本人から見ると高級車らしくなく個性的な《CX》だが、突飛に見えるライトやワイパーの操作は、実際に操作してみると手の移動範囲も少なく、合理性と機能性に富む。メーターも、一瞬で情報を読み取らせようというアイデアの賜物だ。「空飛ぶ絨毯」と形容される乗り心地の良さと、沈み込んだあとに身体を包む柔らかいシートも快適で、長距離移動での疲労も最小限だった。
《CX》が個性的になったのは、「安楽で快適な移動の実現」を求めていた〈シトロエン〉の思想を具現化した結果だった。これほどにメーカーの思想を反映させることは、クルマの画一化が進む現代では、もう見られないだろう。《CX》が今魅力的に映る理由は、まさにその「シトロエンらしさ=思想の具現化」にあるのだ。
country: France
year: 1974-89
seats: 5
size: L4,630×W1,790×H1,360mm
price: approx 1,600,000 yen
special thanks to Manabu Kosuge
※データと価格は、撮影車両を参考に算出したものです。
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