芸術家の施主と若き建築家、どんなやりとりをしたのか。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS facebook-a facebook instagram line twitter youtube

芸術家の施主と若き建築家、どんなやりとりをしたのか。

伊東豊雄を世に知らしめた〈笠間の家〉が完全に修復された形で公開されている。陶芸家の施主が焼き物の街、笠間に移り住むために構えたものだ。パンダを飛ばして見学に。

周囲の環境は豊かな田園風景、陶芸家も多い地域だそうだ。屋根や壁面の曲線がこの家の只者じゃない感を発揮している。
〈笠間の家〉は笠間市が無料公開しているわけだが、個人住宅として建てられたものを一般客がこうしてゆっくり見つつ、お茶をしながらのんびりできるというのは実に貴重な体験となる。築100年以上といった歴史的建築ならばあちこちにあるが、何よりもここの設計者は業績、知名度ともにバリバリの現役なのだから、ライブ感のようなものが全然違うのだ。

伊東豊雄40歳のときの作品、3年後に建築家協会新人賞を受賞したのはまさにこの家によってのことだった。
美しく心地良く、どこか緊張感も漂う居間。現在はカフェスペースともなっている。
施主は前衛的な陶芸家、里中英人で9歳年上、すでに国際的な評価も高く脂の乗った創作活動をしている時期だった。里中は大学で建築を学んでから陶芸に進んだこともあり、若き建築家に対しては理解ある施主だったという。

しかし、例えばリビングの壁と天井との接線をたどっていくとゆったりと曲線を描いていて、初めて壁が緩やかな曲面になっていることに気づくのだが、そうしたあんばいを芸術家としての施主が果たして快く受け入れてくれるかどうか、当時の伊東はドキドキしたのだろうか、あるいはまた自信満々で提案したのだろうか。そんな想像の発端がたくさんあることも、こうして広く公開される意義のひとつだと思う。
ギャラリースペース。