ART
あらがえない没入感。ダグ・エイケンの映像世界に身を委ねて。
『カーサ ブルータス』2021年1月号より
December 9, 2020 | Art, Design | photo_Satoshi Nagare text_Jun Ishida
〈エスパス ルイ・ヴィトン東京〉で開催中の現代美術家ダグ・エイケンによる映像インスタレーション。アラスカの溶けゆく氷河をマルチスクリーンで映し出す映像は、見る者を引き込み、かつてない没入感をもたらす。
客を取り囲むように設置されたスクリーンに映されるアラスカの景色。イメージは溶けゆく氷河に、海中の氷へと移っていくかと思えば、今度は1点の曇りもない青空にカメラレンズが作り出す太陽のフレアへと変わる。始まりも終わりもないような約4分の映像はループされ、永遠に続いていくかのようだ。
これは現代美術家ダグ・エイケンによるインスタレーション作品《New Ocean: thaw》(2001年)。日本で初公開されたのは2002年に遡る。フォンダシオン ルイ・ヴィトンのコレクションであり、なかなか日本で見ることのできないエイケンの貴重な作品が、現在〈エスパス ルイ・ヴィトン東京〉で展示中だ。
これは現代美術家ダグ・エイケンによるインスタレーション作品《New Ocean: thaw》(2001年)。日本で初公開されたのは2002年に遡る。フォンダシオン ルイ・ヴィトンのコレクションであり、なかなか日本で見ることのできないエイケンの貴重な作品が、現在〈エスパス ルイ・ヴィトン東京〉で展示中だ。
ダグ・エイケンは、《thaw》のような映像インスタレーションから建築的なものまで、さまざまだ。それらの共通点を挙げるとすれば、作品が観客にもたらす没入感だろう。視界を覆う氷河の映像も、近作である砂漠に設置された周囲の景色を反射する鏡のパビリオンも、見る者はそこに現れるイメージに引き込まれ我を忘れる。とはいえ、エイケンは現実世界に引き戻すことも忘れない。彼はインスタグラムで、東京での展示を告知しつつ、次の事実を添えた。
「シベリアのベルホヤンスクは今年北極圏で最も高い気温となる38度を記録した。それは同日のラスベガスの気温と同じである」
約20年前に作られた作品が、新たな意味を帯びて蘇った。
「シベリアのベルホヤンスクは今年北極圏で最も高い気温となる38度を記録した。それは同日のラスベガスの気温と同じである」
約20年前に作られた作品が、新たな意味を帯びて蘇った。
『Doug Aitken《New Ocean: thaw》』
〈エスパス ルイ・ヴィトン東京〉
東京都渋谷区神宮前5-7-5 ルイ・ヴィトン表参道ビル7F TEL 0120 00 1854。〜2021年2月7日。12時〜20時。