築122年の蔵を再構築した〈ニューバランス〉の新コンセプトストアを解剖。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

築122年の蔵を再構築した〈ニューバランス〉の新コンセプトストアを解剖。

ついに7月17日、日本橋浜町に〈ニューバランス〉の新たなコンセプトストア〈T-HOUSE New Balance〉がオープンした。この革新的なコンセプトストアのディレクションは、クリエイティブチーム〈TOKYO DESIGN STUDIO New Balance〉が担当。意匠監修と内装設計を手掛けたのは建築家の長坂常だ。ホンマタカシの写真とともに、そのコンセプトに迫る。

●新築の建物に再生された築122年目の蔵。

真っ白の建物の中央にある、蔵から移した扉。 photo_Takashi Homma
建物の内部に再現された蔵の木組み。 photo_Takashi Homma
建築家・長坂常がデザインした什器。 photo_Takashi Homma
2階にある〈TOKYO DESIGN STUDIO New Balance〉のアトリエ。 photo_Takashi Homma

隅田川のほとりに広がる歴史ある街、日本橋浜町。オフィスビルが並ぶ表通りから路地に入ると、住宅や問屋、飲食店が軒を連ねる。この一角に、茶室の精神に発想を得たというニューバランスの新たなコンセプトストア〈T-HOUSE New Balance〉がオープンした。1階はデザイナーやアーティストとのコラボレーションアイテムや独自のオリジナルプロダクトを展開するショップ、2階にはニューバランスのクリエイティブチーム〈TOKYO DESIGN STUDIO New Balance〉がアトリエを構える。

真っ白な〈T-HOUSE New Balance〉の建物に目立つサインはない。建物に入ると、その室内に立ち上がる木造建築の木組みに驚くことだろう。これは埼玉県川越市から築122年の蔵を解体し、組み直し収めたものだ。新築で建てられた鉄骨造の建物内に入れ子状態で蔵を支えた木造の構造体が入る。これをそのまま使っては「普通の古民家再生のようで面白くない」と話すのが、〈T-HOUSE New Balance〉の建築意匠監修と内装設計を行った建築家の長坂常だ。

●長坂常が辿り着いた、〈まかない〉の家具とは?

蔵の柱とMDFと鉄板を組み合わせたディスプレイ台。 photo_Takashi Homma

2階にあるアトリエの打ち合わせスペース。 photo_Takashi Homma
古い蔵の木組みにMDFが新たな表情を加えている。 photo_Takashi Homma

「まかない」家具らしい自由な発想の什器や家具。 photo_Takashi Homma
長坂は、これまで経年変化で表情が美しく変わるとは言いがたい、新建材を多用した建物をいくつも再生させてきた。多くの人がそれらに価値を見いださないなか、長坂は素材の価値を反転させて新たな魅力を作り出してきた。しかし今回の材は、「時間を経過して、いい表情になっているんです」と笑う。

「僕が普段相手にする素材と違い、材に穴を空けるわけにはいかない。ただ、建築内に内装の装飾として木組みがあるのではなく、なにか機能をもたせたいと考えました」

長坂はここで、工事現場で職人が作った「まかない家具」を引用しようと考えた。日本の木造工法で柱列の安定を図るため横に通す材を〈貫(ぬき)〉というが、この貫を通すための穴を利用し、職人たちが即席の掃除用具置き場を作っているのを見て、この「まかない家具」で〈T-HOUSE New Balance〉を構成しようと考えた。既存の貫を安価な成型板のMDFに置き換え、それをハンガーラックや照明などを設置する支持材とした。

「誰かに見せようという作為がなく、必要に応じて自分で作る純粋で機能的な即席の家具だから〈まかない家具〉。シンプルだけど拡張性があって、必要に応じて減らしたり増やしたり……僕らはこれにヒントを得た什器を制作しました。〈T-HOUSE New Balance〉は3つのレイヤーを重ねています。1つめのレイヤーは新築の建物、2つめのレイヤーは古い木組み、そして3つめのレイヤーが〈まかない家具〉に知己を得た什器です」

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