【RAIZIN presents】集中連載! nendo 佐藤オオキのひらめきのスイッチ 猪子寿之

佐藤オオキがインタビュアーとなって、毎回、話題のクリエイターをゲストに招く集中連載。第2回は〈チームラボ〉代表の猪子寿之さんです。

汎用的な知のコンポーネントは、机の上では生まれない。

高度なテクノロジーを自在に使いこなし、アートとサイエンスの垣根を超えて活動する〈チームラボ〉。その代表の猪子寿之さんが、今回の佐藤オオキの対談相手だ。佐藤率いる〈nendo〉は今年もミラノ・デザインウィークで大規模な展示を成功させたばかり。世界を舞台に数々のプロジェクトを手がける同世代のふたりの話は、発想のひらめきや仕事の進め方から、クリエイションの核心へと膨らんでいった。

刺激の多い環境のほうが脳が活性化する気がする。

佐藤 これから仕事を頑張るぞっていうときに、スイッチを入れてくれるものってありますか?
猪子 ……ないね(笑)。まず朝が苦手でテンションが低いから、仕事しながら徐々にテンションを上げていく感じです。
佐藤 その間、テンションを上げるためにすることは?
猪子 家を出てから会社に近づいてくると冷静になってきて、ミーティングに遅れそうだなって焦ってくる。遅れるからには何かバリューを出さないと、となる。
佐藤 遅刻がスイッチになるんですね。罪滅ぼしのために仕事も頑張れる、と(笑)。そこからエンジンがかかって、午後にはフル回転になって、夕方からはトップスピードですか。
猪子 そうですね。夕方になればなるほど調子が出てくる(笑)。
佐藤 頭がフル回転しないときに難しいことを考えても効率が悪いし、気分が乗ってるのに単純作業をするのはもったいない。自分を把握する力はクリエイターには大切で、仕事ができる人ほどそんな時間の配分がうまいと思う。でも僕は、夕飯の後で仕事のペースが落ちることがありますね。
猪子 パンや白米を食べず、肉や野菜が中心だと大丈夫ですよ。僕はオフィスにいるときは、深夜まで一度も外に出ないのが基本。ミーティング中でもスタッフにLINEしてお弁当を持ってきてもらい、話の最中でも黙々と食べます。
佐藤 ずっとオフィスにいて、気分転換はどうしてますか。
猪子 オフィスの中でウロウロします。打ち合わせ中でも席を立ったりしますね。話すのが目的ではなく、ただ歩き回っている。
佐藤 普段、運動はしますか?
猪子 週1回、スポーツジムで筋トレしてます。定期的に筋トレするほうが仕事にも気合が入る。
佐藤 それってスイッチじゃないんですか!?
猪子 ジムの直後はぐったりですよ。でもその後の一週間が違う。脳と体は連続してるからじゃないかな。20世紀は脳と肉体を分離しすぎた時代で、学校や図書館など静かな場所で体を固定して考えるのが知の在り方とされた。でも文字の情報量はデータにしたらごくわずかです。まわりにいろんな人がいて音や光があるほうが、脳は大量の情報を処理していて、そんな頭の働かせ方も重要。体で世界を感じ、考えてるんだから。
佐藤 よくわかります。昔は「ながら」は叱られたけど、静かだとアイデアが浮かぶとは限らないし、音楽を聴きながらのほうが進む仕事もありますね。ところで僕は、仕事の数をもっと絞ってクオリティーを上げるほうがいいと言われることがありますが、〈チームラボ〉の仕事もすごい量ですよね。
猪子 量はすごく大事だと思ってます。僕らはデジタルがベースでも、リアルに空間を使う作品が多いから、一度のプロジェクトで新しい実験を100%やりきらない。実験を繰り返しながら、規模を拡大し、次につなげていくんです。
佐藤 それぞれの仕事が実験でありシミュレーションであって、何かに派生していく。これは仕事が多くても利益を生みにくい、つまり薄利多売なんですが、その経験の蓄積が会社の資産になる。〈nendo〉もそういう活動ですね。
猪子 そこは似てるかもしれないね。実験の積み重ねを、汎用的な知恵につなげるんです。LEDなら、品のいい光り方にする技は、先端のアートにもイベントのクリスマスツリーにも応用できる。

《Forest of Resonating Lamps - One Stroke》。昨年9月にパリのメゾン・エ・オブジェで発表。吊るされたランプに観賞者が近づくと輝きが強くなり、その反応が次々と近辺のランプに伝播する光のインスタレーション。
photo_Eric Valdenaire
《Forest of Resonating Lamps - One Stroke》。昨年9月にパリのメゾン・エ・オブジェで発表。吊るされたランプに観賞者が近づくと輝きが強くなり、その反応が次々と近辺のランプに伝播する光のインスタレーション。
photo_Eric Valdenaire